やあ、暇そうだな。ちょっと付き合ってくれないか?
僕で良ければなんなりと、女王様
君に言ってるんじゃないよ、時計
目の前の人間に言ってるのさ
ほら、目を合わせてるんだから分かるだろう? オマエ
今日はオハナシは進まないのさ。代わりに……
まだ大したことは起きちゃいないが、話をちょっとまとめてみようじゃないか
では僕はここに立ってますね
あ、言っておくが、起きたことを首を斬るようにザックリまとめるだけで、細かい伏線とかは知らんからな?
そもそも僕たちはただ、ほぼイリヤ視点で「見ていた」だけですからね。
情報量は人間と同じです
まとめる前に、日付を再確認しようか
イリヤ・イリイチ・パブロフ。
彼があの町、サスリカに訪れた日を
『DAY 0』
つまり0日目としていたね
彼が着いたのは24:30です。
厳密には1日ずれるのでは?
細かい時計だな
時計ですので
じゃあ、イリヤが着いたのは1日目
これで良いだろう?
まずリーリヤって娘だ
兄のイリヤが来る10日くらい前からサスリカにいたらしいが、何をしていたのかほとんど分からんな。町人も大したこと言わんし
彼女が毎日食事していたという飯屋の店主ザミーラは、『2日前』から姿を見ていないと言っていますね
この日に何かが起きたんだろうな
何が?
……
……分からないことは放っておけ!
ともかく、『0日目』からだ
――DAY 0――
この日、3人の人間がサスリカにやって来た
イリヤ、情報屋のアダムスキー・アバルキンとセミョーン・モルチャリンですね
情報屋の奴らは、イリヤよりも先に着いており、お互い鉢合わせもしていないようだな。この深夜、イリヤはアダムスキーと会った
こんなところか
――DAY 1――
『1日目』の朝、アダムスキーとセミョーンは酒場で初めて会った
初めて、といっても、3年ぶりの再会だな
なぜアダムスキーは酒場に行ったのでしょうね
さあな。あっという間に噂が広がったところを見ると、自分がサスリカに居ることをアピールして回っていたのかもな
ああ、イリヤもずいぶん歩き回ってたな。夜10時に帰るのはやりすぎのような気もするが
昼、飯屋で『かみさま』の存在を聞く。その後、セミョーンと出会ったが、大した話はしていないな
アダムスキーが『神』殺しというのは?
神に対して殺すとか殺さないとか、そんなに重要な話か?
……殺せるか殺せないか、ほどは重要ではないですね
ともかく、その夜アダムスキーの部屋の窓に妙なものがあったな。貼りついていたのか、立てかけられていたのか
あの形状の機械、未来でなら近いものがあります
未来?
このオハナシの何十年か後
形が似てるだけじゃないか?
……そういえばセミョーンが鍵を無くしてましたね。人間らしい
「人間らしい」。
って、言ってみたかっただけだろ?
――DAY 2――
『2日目』、ファイーナという女がリーリヤを見たと証言したな。たしか朝見たと言ったか
目撃してから、父親からイリヤの話を聞き、その後イリヤを探していたとは、朝からなんともせわしない女だ
それはともかく、リーリヤが樹海へ向かったと聞かされたイリヤは、樹海に向かおうとしたところでアダムスキーと会いましたね
そう。神話生物については何も言わなくていいだろ、どっちかといえば殺せる方。以上
まあ、正確にはクリーチャー、種族であって神ではない。人間の大多数が知らない、故に神扱いできるってだけだ
まあ、ねちっこく語ってやってもいいんだがな? 「イリヤ」が知らない情報はオマエらも知らないでいるべきだろう?
でなきゃ自分で調べろ。
図書館しかない時代じゃないんだからな
それより、あの小屋は本当に使って良いのか? あの北国で薪が無料(タダ)なんて信じられん
何故?
時計だって差した油が冷え固まれば動かなくなるだろう?
なるほど
……
時計、お前も気になったことがあったんじゃないか? 言ってみろよ。
ここで見当違いなことを言ったとして、誰も気にしやしないさ
……
そうですね……誰かが気づいていそうな点は置いておくとして……
『なぜ座ったか』でしょうか
? いつの話だ?
……
……ムカつくな、その顔
おい、お前、今時計の針を弄ったか?
何のことですか
未来を見てきたな?
この後どうなるのか
……
黙るな。言え。
水没させてバラすぞ?
痛くありませんのでご勝手に
はっ? チクタクマンごときが随分余裕そうだな
赤の女王様こそ、なぜ汗を掻いておいでなのです?
不思議の傍観者
不穏当にも
思考を分裂させ
議論を愉しむ者
無事にここまで読み進めることが出来ました!
じわじわとなにか入っては行けない所に足を踏み入れてる感じかドキドキしますね!イリヤくんはリーリヤちゃんに再開できるのか……続きが楽しみです!
この回のラスト、スマホ画面をタップしたら……驚きました(笑)