――DAY 2――



宿屋『サスリカ』





イリヤ(イーリャ)

……明日のために、今は休まなきゃ。……きっと、きっと、こうするのが一番いいんだ

そういえば、絵、駄目になっちゃったな……

セミョーン(ショーマ)

情報によれば、奴は、樹海に行こうとしていた……

……まだ情報が不足してる。今ウロチョロされるわけにはいかないんだよ

……

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

鍵は3つ。変わりないね

この吹雪が止んだら、新しい鍵を作らなきゃいけないね……それと……

ん?

すいません、

明日の朝ご飯は要りません

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

書き置き?

――DAY 3――

早朝

森小屋

イリヤ(イーリャ)

早く、来すぎたかな

十分に休息を取ったイリヤは、朝早くに

昨日の森小屋を訪れた。


森小屋の鍵はやはり開いたままだった。

使わせてもらいます……

小屋の中も、昨日と何も変わらない。

ふう……



 火を起こす。


 ときおり手を休めて、窓の外を見た。


樹海。



人を拒むようなその名とうらはらに、

森小屋の近くには歩道程度の小さな道があった。


どこまで続いているのかは分からないが、

普段なら入る者はいるようだ。


この質素な小屋も、

この森の木で建てられたのだろう。




森小屋は、ちょうどその入り口をはっきりと

見れるように大きく窓が作られていた。

……来たときには、雪の上に足跡は無かったけど……

こんな吹雪じゃ、足跡なんて頼りにならないよな……

すでに、イリヤがここに来るまでに

 つけた足跡は消えていた。

イリヤ(イーリャ)

本当に、ここにいるだけで、いいのかな……

……時々、少しだけ踏み入るくらいなら、いいよね?

……俺たちは慎重に行動しなきゃならねぇ

燃え上がる炎のような衝動は、『情報屋』としては失格なのさ

アダムスキー・アバルキンは

樹海の中を歩んでいた。




樹海の入り口から続く道は、

進むほどに細く頼りなく、

獣道のようになってゆく。









やがて、痕跡が無くなった。




目の前に広がるのは、木々のみ。


目印がなければ戻ってこれるかも分からない

樹海の真の姿だった。

アダムスキー

だが、今回はそうも言って
られねぇようだな

この深さまで歩むには樹海に入ってから

1時間以上歩き続けているはずだが、


まるで炎を纏っているかのようにこの男には

全く息切れも震える様子も見られなかった。

アダムスキー

この先に誰も居なければ
良いんだがな

ため息をついて踏み出そうとした足は、

……おーい! リーリヤ!!

後方から小さく聞こえた声に、引き下げられた。

アダムスキー

……こんなところで何してるんだ? イリヤ

イリヤ(イーリャ)

あっ、アダムスキーさん……


樹海の入り口付近。



まだはっきりと道が残っているとはいえ

必ずしも安心な場所とは言い難い。


そこにイリヤは立っていた。



少し狼狽した少年は、すぐに顔を引き締めた。

イリヤ(イーリャ)

すみません、でも、リーリヤがここを通ったんです!

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