釣った魚にあげるエサ

※ ハートと背景の使い方を聞いて、作ってみました。

鶴太郎

……。

鶴太郎は部屋の隅に行き、吾助に背を向けて何かをしています。

鶴太郎

……。

吾助

何してたんだ?

戻ってきた鶴太郎に言いました。

鶴太郎

きししっ

奇妙な笑い声を上げただけで、答えません。

吾助

……。

吾助はそれを、気味悪そうに見ています。

与兵

……。

そこへ、お茶を入れた与兵が囲炉裏端へ戻ってきました。

与兵

ん……。

それだけ言って、吾助にお茶を渡します。

吾助

悪いな。

吾助は受け取って、それを飲みました。

鶴太郎

よひょ~。

与兵

……。

与兵がお茶を渡そうとすると、鶴太郎は背中に何かを隠しながら近寄ってきます。

鶴太郎

わかってると思うけど、
ボクのキ・モ・チっ♪

与兵

……。

鶴太郎は背中に隠していた紙を、与兵に差し出しました。

二つ折りの紙です。

与兵

……。

迷惑そうです。

与兵

ん。

とりあえず、与兵はお茶を鶴太郎の前に置きました。

鶴太郎

よひょ~♡

鶴太郎は紙を手渡します。

与兵

……。

ホントに迷惑そうに受け取ります。

鶴太郎

読んでっ♡

与兵

……。

与兵はしぶしぶ二つ折りの紙を開きました。

紙の真ん中にそれだけ書かれていました。

鶴太郎

いいでしょ?
いいでしょ?

与兵

……。

鶴太郎

与兵?

鶴太郎

ボクの「好き」
伝わらないの?

泣きそうです。

与兵

……。

与兵は自分の分のお茶を持ってきて、黙々と飲みました。

吾助

こいつがこれくらいで
デレるわけないだろ。

鶴太郎

吾助!
邪魔だから、帰って。

吾助

泊るし。

鶴太郎

ぷぅ

吾助

お前、こいつの
気持ちの動かし方、

吾助

知りたい?

鶴太郎

……。

鶴太郎

んっ。

うなずきました。

吾助

ふっ

吾助

これが……、
俺の気持ちだ。

与兵

……。

いつ用意したのか、吾助も二つ折りの紙を持っていました。

吾助

見ろよ。

その紙を、与兵の手元に差し出します。

与兵

……。

与兵はお茶を置き、紙を受け取りました。

鶴太郎

なに、この
ド派手なピンク!

与兵の後ろから覗き込んでいた鶴太郎が怒り出しました。

吾助

そこにさりげなく入る
「好き」がいいんじゃないか。

鶴太郎

かわいいけど、
ど派手っ!

与兵

かわいいのか?

鶴太郎

ボクの白い紙に
「好き」がいいに決まってるよ!

吾助

お子様には
この良さがわからないか。

鶴太郎

ハデハデにしないとわからないなんて吾助がジジイなんだよ!

鶴太郎

シンプルに「好き」が
長く愛される秘訣なんだからね!

吾助

与兵……。

与兵

ん……?

吾助

こういうの、
好きだろ?

与兵

……。

鶴太郎

もっかいやる!
与兵、見ててねっ!

与兵

何をする気だ?

与兵と吾助は二人で鶴太郎を見ました。

鶴太郎

…………。

固まりました。

吾助

ノープランか?

鶴太郎

違うもん。
違うもん。

鶴太郎

ボクのが与兵を
大好きなんだもん。

与兵

何を張り合ってるんだ?

鶴太郎

与兵……。

与兵

二人とも、俺の
恋愛対象じゃないからな。

鶴太郎

ぇっ……。

吾助

……。

与兵

綺麗なお姉さんが
好きだから。

鶴太郎

……。

鶴太郎は、じーっと与兵を見つめました。

与兵

……なんだ?

鶴太郎

与兵、
ボクのこと、キライ?

与兵

……。

鶴太郎

ボクの身体が
目当てなの?

与兵

……人聞きが悪いことを言うな。

吾助

こいつ、釣った魚にエサ、
やらないとこ、あるからな。

鶴太郎

だからエッチしてくれないんだ……。

与兵

お前が足、
怪我してるからだろ!

鶴太郎

嫁だから
してもいいのに……。

与兵

嫁だけど、
だからと言って……。

与兵

したいから
するっていうのも……

鶴太郎

ボクのこと、
好き?

与兵

き……
嫌ってないからな。

鶴太郎

ボクは与兵に「好き」って書いた紙をあげたのに、与兵は「嫌ってない」なんだ……。

与兵

す……す……

鶴太郎

与兵

好きだ

ほとんど聞き取れないくらい、小さな声です。

鶴太郎

吾助のことは?

与兵

え……。

鶴太郎

与兵は吾助のこと
好き? 嫌い?

与兵

何言ってるんだよ!

なぜか照れています。

鶴太郎

……。

鶴太郎は、じーっと与兵を見つめます。

与兵

おっ俺は……、

吾助

お前が嫌がること、
俺はしないし。

与兵

人聞きが悪いこと、
言うな……。

鶴太郎

……。

吾助

……。

鶴太郎

吾助のこと、
好きなんだ……。

与兵

……。

鶴太郎

それでも
ボクが、嫁だもん……。

鶴太郎

ふえっ、えぎゅ……。

吾助

泣くなよ。
こんな唐変木のことなんて、
俺が忘れさせてやるよ。

与兵

……?

鶴太郎

吾助……。

吾助

お前と俺の「好き」が
わからないようなヤツ、
バチが当たればいいんだ。

鶴太郎

ふぇっ

うなずきはしませんが、鶴太郎は吾筋をじーっと見つめました。

吾助

俺はお前に淋しい思いなんて
させないからな。

鶴太郎

吾助……。

吾助は鶴太郎の頭を撫でます。
鶴太郎も、それを拒みませんでした。

与兵

……。

与兵は鶴太郎を抱き上げました。

与兵

俺の嫁に
手を出すんじゃない!

与兵は吾助に言いました。

吾助

恋愛対象じゃないんだろ?

与兵

恋愛対象じゃないけど
俺の嫁!!

鶴太郎

与兵……。

そう言われて抱きしめられ、鶴太郎も嬉しかったようです。

吾助

じゃあ……、
俺の気持ちは?

与兵

え?

与兵が固まります。

鶴太郎

むっ

吾助

俺の気持ちは、
お前にとって、なんでもないのか。

与兵

だって、吾助のは
……冗談だろ?

吾助

そうだ。冗談だ。
気にするな。

吾助

お前は
俺のことなんて
気にする必要はない。

与兵

……ごす

吾助は鶴太郎の頭をなでました。

吾助

押して押して
引けばいい。

鶴太郎

んっ!

鶴太郎はコクンとうなづきました。

与兵

押しても引いても
無理だからな!

与兵

本当だからな!
俺は嘘が嫌いなんだからな!

鶴太郎

は~い

吾助

ふっ

与兵

本当だぞ。
絶対だからな。

鶴太郎

じゃあ、
もうしないの?

与兵

はぁ?

鶴太郎

与兵の嫁だけど、
もうしないの?

鶴太郎

釣った魚に
エサをあげないの?

与兵

けけけ怪我
してるから……。

与兵

吾助もダメって
言ってたし……。

鶴太郎

ぷぅ。

吾助

俺、怪我してないから
できるぞ。

与兵

は?

鶴太郎

何してんの?!
吾助のバカぁ!!

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