温かい気持ち

鶴太郎

まだいるの?

囲炉裏端にいる吾助を見て、鶴太郎は言いました。

吾助

お前がはたを織るって言うから、
心配して泊まり込んでやるんじゃないか。

鶴太郎

え? 泊まるの?

鶴太郎は嫌そうです。

与兵

別にいいだろ。
布団だってあるし。

鶴太郎

あれ、ボクの布団だから。

与兵

使ってないじゃないか。

押入れに入りっぱなしになっています。

鶴太郎

使うもん。

与兵

じゃあ、お前、あれ使えよ。
俺と吾助が一緒に寝るから。

鶴太郎

!!

吾助

久しぶりだな、
お前と寝るの。

与兵

俺は久しぶりって
感じしないけどな……。

べたべたはしていましたが、一緒にベッドで寝た覚えがありません。

吾助

お前が寝た後、入ってたんだぞ。

鶴太郎

!!!!!

鶴太郎

そうなの?!
与兵!!

半泣きで鶴太郎は聞きます。

与兵

…………。

よく覚えていません。

吾助

こいつは寝てたから
知らないよ。

鶴太郎

じゃあ、吾助は与兵が寝てる間に、あんなことやこんなことや、こーゆーのまでやってたの!?

吾助

…………。

吾助は与兵に顔を寄せます。

吾助

お前、こいつに何してるわけ?

こっそりと言いました。

与兵

いや、これは俺のせいじゃないと思うんだが……。

吾助

ホントにそうか?

疑っています。

与兵

……………………。

与兵にはわかりませんでした。
はじめはそうかと思っていましたが、だんだん、元々の鶴太郎がこうなのかもしれないと思うようになっていました。

与兵

いくらなんでもひと月で性格か変わったりしないよな。こいつの元々の性格なのかもしれない……。

けれどそうすると、ある疑問が浮かびます。

与兵

こいつ、いったいどこで生まれて、どこで育ったんだ?

与兵はこっそりと鶴太郎を見ました。

鶴太郎

吾助、そこ、ボクの席。
どいて。

吾助

お前、いつもあっち座ってるじゃん

吾助はいつも鶴太郎が座らされていた席を指します。

鶴太郎

そこがいいの。

鶴太郎は吾助を退かせ、そこに座りました。

吾助

やれやれ。

吾助は楽しそうに隣に移動します。
その表情は、与兵がいつも見ていたものでした。

与兵はなんだか嬉しい気持ちになりました。
そして、吾助は与兵が見ていることに気づき、

吾助

与兵、茶。

と言いました。

与兵

ああ。
そうだな。

当たり前のように、与兵は立ち上がりました。

鶴太郎

何、命令してんの?
与兵、入れなくていいよ。
吾助が自分で入れればいいじゃん。

ムキになって鶴太郎は言いました。

吾助

俺、客だし。

鶴太郎

そんな図々しい客、
早く帰って。

吾助

今晩は泊まるの
楽しみだな。

吾助は楽しそうに言いました。

与兵

ふ……。

与兵もそんな気がしてきました。
小さい頃は、吾助といつも一緒でした。

その頃のことを、思い出しそうです。
そして、お茶を入れようと台所に向かおうとしました。

すると、足元に白い羽根が落ちているのが目に入りました。

与兵

今朝、掃除したのに……。

与兵は毎日掃除をしています。
それを拾うと、また落ちているのが見えました。

与兵

あれ?

羽根は、納屋に向かって点々と落ちています。
後ろを振り返ると、鶴太郎は吾助に文句を言っています。

鶴太郎

吾助のおたんこなす!

羽根は、鶴太郎の足元にも落ちていました。

与兵

なんでこんなに落ちてんだ?

与兵は首を傾げました。
その羽根をそっと拾い、見つめました。

とても美しい羽根です。
羽根の下の方がフワフワしていて、ほんの少しの風でユラユラと揺れています。

穢れのない白さは、見ている者の気持ちまで綺麗にしてくれそうな気がしました。

与兵はそれを、懐にしまいました。
すると、ふわっとした気持ちになりました。

まるで、鶴太郎を抱きしめた時の気持ちに似ていました。
温かくて、優しくなる気持ちです。

鶴太郎

何してんの?

鶴太郎が心配そうな顔で、与兵を見て言いました。

与兵

何でもないぞ。

与兵はそう言って、台所に向かいました。

与兵

もう一回、掃除しないとダメかな?

与兵はそんなことを思いました。

鶴太郎

………………。

鶴太郎は、じーっと与兵を見ていました。

吾助

どうした?

鶴太郎

ううん。
吾助こそ、どうしたの?

吾助

いや、珍しく
難しい顔してんなって。

鶴太郎

そんな顔してないし。

鶴太郎はぷっとふくれました。

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