――DAY 2――

午後

町中

ファイーナ(ファーヤ)

じゃあ、絶対に無茶しちゃ駄目よ!



 ファイーナは別れるまでの間、

 しつこいほどにその言葉を繰り返した。

ファイーナ(ファーヤ)

またね!

イリヤ(イーリャ)

結構時間掛かっちゃったけど……優しい人だったな






『絶対、元気な妹ちゃんに会わせてね?』



……はい、絶対



 イリヤはマフラーの端を

 きゅっと引っ張って、駆けだした。



 誤算は一つだけ。


 勢いに任せて駆けて行けるほど、

 この吹雪に自分が耐えられる、

 と思っていたことだけだった。


はぁ……雪だるまになりそ……



 すぐに体力が尽きて、歩き出す。



 行き倒れるほどでもない、

いざとなれば近くの家に入れてもらう

 こともできただろう。



 だが、イリヤは意地になっていた。

 午前中がふいになったことも焦りを生んでいた。

イリヤ(イーリャ)

そんなに遠くないって言ってたし……外に出てる人もいるし

 吹雪が強くとも、人影が見えない程ではない。

人? ……あの人って

 

アダムスキーさんだ……

……

僕は、あの人にどんな顔をして会えばいいんだろう

そもそも、話すことはあるのかな

――DAY 1――

午後

空き家『ミーシャ』

……

セミョーン(ショーマ)

それと、あまり言いたくはないんだがな

イリヤ(イーリャ)

何ですか?

……アダムスキーは……いや…………

…………イーリャの父さんを殺した日本人は、憎いか?

……それは……

セミョーン(ショーマ)

……聞かれても困るよな

なんで、今聞くんですか?

忘れてくれ

……言われないと逆に、深読みしちゃいます

…………

『あいつとは関わらないことだね。 
ろくなことになりゃしないよ』 

  『あの男だよ。
 …………あの忌々しい男……』

……



 イリヤは、歩みを止めた。

 そのまま、少し後ずさる。

アダムスキーさん!



 そして駆け出す。

 彼の元へと。





                 「撃ち殺してやりたい」




「あの男は……」




              「そのせいで」



 脳内を駆け巡る言葉を、

立ち止まった間に降りかかった

 雪ごと振り払った。


このままは嫌なんだ!

アダムスキー

イーリャ?!




 アダムスキーの意外そうな表情は、

 無性に可笑しく思えた。




僕は、





『話をしてくれない?』

他人なんて関係ない

この人を、

『だから、ほっといておくれ』

危険だから?
悪い気がするから?

知るか!

僕はどうせ、何も知らない!
判断できるわけない!

だから、

話を、したいんです

放っては
おけないだけだ

はぁっ……

アダムスキーさんは、何が目的なんですか?

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