うとうと
といれっといれっ
走るなよ。
転ぶだろ?
わわっ。
なんで抱っこするの?
えっ?
トイレをさせて
あげようと思って
本物の幼児じゃ
ないんだから
自分でできるよ!!
なんだ。
それは残念
ふう……。
間に合って良かった
もうちょっと
兄ちゃんに世話させて
くれてもいいのにな
そんなことしたら、
身も心も子供に
なりそうでヤダよ
せっかく昔に
戻ったような
気分になったのに
俺も兄ちゃんに
肩車されたとき、
昔のこと思い出しちゃった
昔は肩車よりも
おんぶの方が多かった
けどな
そうだったね。
懐かしいなあ
あと、こうやって
撫でられる好き
だったよな?
うん……
撫でられると
猫みたいに目を細めるの、
昔とおんなじだな
だってなでられると、
気持ちよくて……
うとうと
なんか眠くなって
きた……
しょうがないなあ。
よいしょっと
(あ、おんぶしてくれた。
兄ちゃんの背中、
あったかいな……)
すう……
……王子?
すやすや
寝ちゃったか。
人ごみに疲れたのかな
(……さて。
どうすれば元に戻るのか
考えなくちゃな)
フハハハハッ!
ひさしぶりだな、
美家 騎士!
……あっ。
元凶が自らやって来た
その子供を早く渡せ!
どうして?
家に連れて帰るからに
決まっているだろう!
それは誘拐だろ。
犯罪だぞ
誘拐などではない!
わ、私はその子供の
保護者だぞ!
嘘つけ
どうして嘘だと言える!
俺はこの子の兄だから
何!?
それが本当だという
証拠がどこにある!
ちょっと待ってろ
はい、この子の生徒手帳。
名字が俺と同じだろ?
そ、そうだったのか。
どうりで雰囲気が
似ていると思った……
そうかな?
どこが似てる?
優しそうで
純朴に見えるのに、
男を惑わせる雰囲気が
気色の悪いこと
言ってると殴るぞ
お前は昔からそうだ!
どうして私だけには
当たりがキツイんだ!
お前が変なことばかり
言うからだろ
私は何一つ変な事を
言っているつもりは
無いのだが……
なあ……。
うちの弟を子供にしたのは
お前なんだろう?
だったらどうした
と言うのだ
元に戻す方法、
教えてくれないか?
貴様ら兄弟が私に
身も心も捧げるならば、
教えてやらんでもない
ふざけるんじゃない。
こっちはマジメな話を
してるんだ!
ご、ごめんなさい
すやすや……
重くなってきたな……。
一旦ベンチに置くか
そっ…
むにゃ……
チャンス!
やめろ。
うちの弟に触ったら
釘バットを持ったヤンキーを
連れて来るぞ
それだけはやめてくれ!
俺はそのセットがニンニクや
十字架よりも苦手なんだ!!
お前、大学生の時に
ヤンキーに釘バットで
襲われたもんな。
まだトラウマが抜けてなかったか
何か大変そうですね。
大丈夫ですか?
あ、丁度いいところに。
悪いけど話が終わるまで、
この子を見ていて
くれないか?
わかりました
どうして私が触るのは
駄目なのに、
そいつはいいんだ!
この子は俺の
可愛い教え子だ。
お前と違って信用できる
ひ、ひどい!
私は深く傷ついたぞ!
えっ。
誘拐宣言しておいて、
傷つくとは思わなかった
むにゃ……。
うるさい……
起きた?
おはよう
きょとん
お兄ちゃん……誰?
王子!?
秋生くんのこと
覚えてないのか!?
アキ……?
わかんない……
まずいことに
なってきたぞ
王子って……。
えっ、まさか?
その、まさかなんだ。
わけあって王子が子供に
なってしまって……
身体と一緒に、
記憶まで幼児退行を
始めているみたいなんだ
そんな……。
王子先輩が俺のこと
忘れるなんて……
お兄ちゃん……。
ごめんね。
がんばって思い出すから
いいんだよ。
謝らなくても
おでこにチュウ
された……
イヤだった?
ううんっ。
お兄ちゃんなら
イヤじゃないよ!
あははっ、そんなに
首を振らなくても。
可愛いなあ
むぎゅっ。
く、苦しい
そんなにベタベタされると
兄としては少し複雑だな
そうですか?
すみません
私を無視して
話が進んでいくわけだが
ところで、騎士先生。
どうしてこんなことに
なったんですか?
引き続き無視を
されているわけだが
そこのヴァンパイアに
血を吸われたら、
子供になったらしい
じゃあ……
先に言っておくが、
元に戻す方法は
教えてやらんぞ
わかってる。
教える気があるなら
とっくに元の姿に
戻ってるだろ
それなら今の
『じゃあ』ってなんだ
それは……
あー!
BL王子、こんな所に
いたんですか!
探したぞ!!
お姉ちゃんとお兄ちゃん、
誰……?
王子くん、
こっち向いて
えっ?
チュッ
んっ!?
!!
ほっぺじゃなくて、
唇にキス……!
テメーッ!
いたいけな幼児の唇を
奪うとは何考えてんだ!
ぽかん
…………
うわっ!
もっ……
戻った!?
秋生くん!?
どうしてキスで戻るって
わかったんだ?
お姫様にかけられた呪いは
王子様のキスで解けるんじゃ
ないかと思って
あ、秋生くん。
俺はお姫様じゃないよ……
あ、この場合は
キスされた側が
王子様でしたね
さすが秋生くん!
おれたちにできない事を
平然とやってのけるッ
そこにシビれる!
あこがれるゥ!
藤吉さん?
なんで『おれ』なの?
有名なセリフなのに
知らないなんて、
オタクの名折れですよ!
なんか俺、
よくわからない内に
ディスられてる?
どうでもいいが、
私の断りも無しに
元の姿に戻すな!
お前、まだいたのか。
今度こそブチのめ
してやる……
げっ!
昨日の釘バットを
持ったヤンキー!
ここは戦略的撤退だ!
また会おう、
美家 騎士!!
もう会いたくないよ
騎士先生って
変わったお知り合いが
いるんですね
変な知り合いのせいで
秋生くんにまで
迷惑かけてごめんね
いいですよ。
ちっちゃい王子先輩に
会えましたし
ありがとう、
秋生くん
みんなの前でキスしたこと
怒らないんですね
だって元に戻して
もらえたし……
俺は怒ってるぞ!
いつもいつも美味しいとこ
ばっかり持って行きやがって!
落ち着けよ、暮男。
とりあえずその手に持ってる
釘バットを置いてくれ
くっ、くううっ!
俺だって幼稚園児の王子と
キスしたかったのに!!
暮男……
まあまあ。
とりあえず、元に戻って
良かったじゃないですか
そうですね。
俺はちっちゃい王子先輩も
今の王子先輩も
大好きですけど
俺だって大好きだ!
テメーとは歴史が
違うんだよ!!
暮男、ハウス!
俺は犬じゃねえ!
はあ……
おはよう、コウ!
おはようございます
あっ……。
王子と藤吉……
元気ないな?
風邪か?
風邪じゃないけど、
病気かもな……
えっ!
なんの病気?
恋の病……
はい?
ま、まさかコウくん!
BL王子以外に好きな人が
できたんですか!?
その、まさかだよ
本当か!?
ああ……。
ごめんな、王子
なんで俺が振られた感じに
なってるのかわかんないけど、
それは良かった
そんなあ……
これからは
普通の友達に戻れるな!
俺……本当に
どうしちまったんだろう
あ、俺の話
聞いてない?
気づくとあの子のこと
ばっか考えちまうんだ
へえー。
そんなに好きに
なったんだ
ああ……。
あの子、王子、王子、
あの子、王子……っていう
ペースで顔が思い浮かぶ
なぜ俺の顔が?
なーんだ。
結局、BL王子のことも
好きなままなんですね
当たり前だろ!
二股になっちまうから
悩んでるんだよ!
一方的に想ってるのは
二股って言わないと
思うんだ
ところでコウくんが
好きになった子って、
どんな人なんですか?
実は……
幼稚園くらいの子なんだ
えっ
そ、それはもしかして
昨日のハロウィンの
行列で見かけたとか?
よくわかったな。
王子にそっくりで
ものすごく可愛いんだ
まさかとは思うけど、
騎士兄ちゃんに
肩車されてたりして?
ああ、そういえば
お前の親戚だもんな!
そうだよ、その子だよ
ああ……
それってBL王子
本人なのでは……
もががっ
余計なこと
言わないで藤吉さん!
もががっ!
口を塞がないで
くださいぃ~!
また、あの子と
会いたいな……
なあ、会わせてくれよ王子!
う、うん……。
その内な?
その内か……。
はあ……
(なんか変なことに
なっちゃった
なあ……)
(コウくんって、
よっぽどBL王子が
好きなんですねぇ)
うわーん!
待ってます!(´;ω;`)ブワッ