調査書「カルガモ」　

…………

五日町さんいますか？

！

あ、なんだ、居たじゃないですか。返事なかったからびっくりしましたよ

何の用だ？

いやーそれが。さっき捜査一課通りかかったらお仕事(雑用)もらっちゃいまして？

……

……五日町さんは無言が一番怖いですよね

あ、でもついでに、差し入れも二人分「貰って」きたんですよ！
紅茶淹れません？

それは「二人分」の量か？

あはは、一課の人たち上から目線でムカついちゃったんですもん

あれ、そういえば、そこの棚の資料見てたんですか？

ああ

あー、それ、僕に絶対見せてくれないやつだ

当然の処置だ

もっと僕を信用してくれていいんですよ？

……

そこで無言……

――おはようございます

おはよう……ございます

ちょうど良いタイミングでした

……すみません、朝が遅くて

大層お疲れでしたから、無理もありませんよ。
今は休息と栄養が必要です

……でも、こんなことをさせてしまって

少なくとも、わたくしは気にしておりませんので

では、ブランチと致しましょうか

……ふむ

悪くない味だ

ティーバッグの紅茶淹れて褒められてもあんまり嬉しくないですね

ねえ、環さん

ずいぶん無防備ですね

もし僕が、どこかの誰かさんみたいに、この紅茶に香りのしない毒を入れていたら……なんて、考えませんでした？

……

愚問だな

そのような不審な動きをすれば、気づいている

それに

夜暮、お前はそのようなことをしない。少なくとも、今は

……これは喜ぶべきなんでしょうか？　「環さんが僕に注目してくれている、僕のことを分かってくれている」って

少なくとも、そのために茶を淹れたのだろう？

こうしている間は、環さんは僕のものですからね

環さんも分かってて僕に付き合ってくれてるんでしょ？

僕の独占欲を満たしてくれるために

……さあな

ふふ

……でも、ほんのちょっとは五日町さんのためだったりしますよ？

ほう

気づいてるかどうかわかんないですけど、環さん最近ちょっとストレス溜まってるっぽいですよ。そこまで言動には現れてませんけど

？

ほら気づいてない！
さっき僕がドアの外から呼んだとき返事なかったのとかけっこう影響出てますよ

……夜暮

何です？

あれ、怒らせちゃった？

……気づいていなかった。感謝する。気を付けよう

……五日町さんって、時々肩透かしてきますよね

？

で、ここでその反応か

……はぁ

口実とか無しでいつでもこんな風にできたらなぁ～

？