――出発前夜――
――出発前夜――
師匠。ボクに稽古をつけてください
おいおい、こんなところにまで来て熱心だな。体力残しといたほうがいいんじゃないか?
大丈夫です。早く国を守れる強さが、母を護れる強さが欲しいんです!
そんなに焦っても仕方がないだろ。子供の体では限界もある
けど……
今は明日のために備えておけ。足手まといになるなら置いていくぞ
……わかりました
ま、大切な人を守るために剣を振るうって考え、嫌いじゃないぜ
師匠にも大切な人がいるんですか?
ああ、はじめて……守りたいって思える人を、見つけたんだ
師匠の故郷の人ですか
ああ。全てが終わったら彼女と世界を旅するんだ……それまでは死ねない
ローザ……どうか無事でいてくれ
翌朝、青夜たちは祠へ向かった。
途中から雪が強くなり、目的地の雪山を登り始める頃には吹雪になっていた。
ドラゴンでも進めないため、なるべく風を避けた場所を辿って徒歩で向かっている。
もともと聖剣は二本とも創世神の祠に祀ってあったそうだよ
そうなの?
どうして一本だけ風の国へ?
何百年も昔、魔王討伐に使用されたときに、一本は風の国に持ち帰られたそうです
一緒に置いとけばいいだろうに
何か理由があったんじゃないかな。遠い昔の話だから。おじいちゃんも知らないそうですけど
歩くこと半日、ようやく目的地が見えてくる。
……ここの洞窟にある祠です。入りましょう
ハアハア……
ハアハア……ラフィ、大丈夫?
はい……なんとか。アズールさんも大丈夫ですか?
ええ……寒さは防いでもらっていても、体力的にかなりきついわね
だから残れと言ったのに
いいえ、私には見届ける責任があります。聖剣回収、そしてあなたは信じるに足る人物なのかを
ご苦労なことだな
祠の奥底へとたどり着く青夜たち。
おい、光を灯す術などはないのか? 暗くてよく見えない
石像の側にたいまつがあるはずです。待っててください
たいまつに火が灯り、周囲が明るくなる。
そこには創世神の石像。
そして……
岩に刺さった聖剣が目視できる。
あれが聖剣シュバルツ……
なっ、なんだと……!?
突然、青夜が大声を上げた。
ど、どうしたんですか? 師匠
こいつが創生神なのかっ!?
石像を見上げて、目を丸くする青夜。
なにを驚いているんですか?
像がどうかしたんですか?
そんな馬鹿な……
この顔……この姿どう見ても……
この方が世界をお創りになられた神様、
創世神【ローザ】像です