ラウたちは不時着現場の公園へ到着する。

これは脱走に使われた戦闘機。ラウの言うとおりだったな

ええ、でもここからどこへ逃げたかですね

なあに、情報部隊のお前なら、ここいらも庭みたいなもんだろ。どこに隠れたって無駄だな

しかし相手はあのローザ様ですからね

(考えろ……ローザ様ならどう動く……?)

(彼女に匿ってくれるような知り合いはいない。そうだな、僕なら民家に逃げ込むか……)

(しかし少年も一緒のはずだから目立つことはできないはず……となるとやはり路地裏で息をひそめるしかないのだろうか……)

(いや、そもそもローザ様の思考を読むなんて不可能だ)

(こっちから仕向けるしかない)

(彼女が今、最も敏感になっていることは、自分のせいで人が傷つくということだ)

(完璧な頭脳の持ち主ローザ様の弱点、それは、人の死だ。記憶を消してまで逃避したい現実)

(ならそこを利用してでも……あぶりだすか)

……青夜くんすまない。彼女を傷つけてしまうことになるだろうけれど

こちらラウ。応答してください

大地さんとミドリさんが『遠征から帰還した』と、大々的に報道してください。どこにいても気付くほどに

これで彼女は必ず戻ってくるでしょう

臨時ニュースをお伝えします

なんだ、また魔女関連のニュースか? この国もいったいどうなっちまうんだか

ニュース……なんて言ってるんですか?

ふむ。今回は良いニュースだ。どうやら消息を断っていた軍の奴らが帰還したみたいだな。前衛の部隊長と医療班の班長か……

え……? お名前わかりますか!?

ん? 大地なんとかと……ミドリ? なんか聞いたことある名前だな。結構前線で活躍してる奴らか

え……?

危険な任務ばっかで怖ええな。俺も軍に入ってたら命がいくつあっても足りなかったろうなあ

よかっ……たぁ……!

あたし……一度戻ってちゃんと話してきます……!

本当に亡くなっていたのだとしたら、青夜さんまで嘘をついてたことになっちゃいます。ありえません

そいつのこと信頼してんだねー

はい……第一あたしをおびき出させるための嘘の報道だとしたら、非人道的すぎます……それはさすがに

わーった! いざとなりゃヴァイスが逃げ道を作ってくれるだろうから、きっちり話つけてきなよ!

ありがとうございます!

ってわけだ、ヴァイス! ここから出るぞ!

わかったのー!

うわっ! なんだお前! どこから!?

boot up...

dismantle...

すごーい! 車がバラバラになっちゃいましたー!

よし、行こうっ!

くそっ! 待ちやがれ!!

やはり来てくれましたか……

ローザ様……

ミドリさんたち……帰ってきたんですねぇ!!

……

びっくりしたじゃないですかぁもう! 会わせてもらえますかぁ?

会うことは……できません。二度と……

え……?

本当は二人とも……あの遠征ですでに亡くなっています

またまたぁ……嘘、ですよね……?

あなたをおびき寄せるための……情報操作です

でもでも……青夜さんだって一言も……

むしろ、伏せておくよう指示を出したのは彼ですよ

……どうして!?

あなたに責任を感じさせたくないと……

あなたの悲しい顔は見たくないと……

……

でも今は……酷なのは分かっていますが、こうするしかなかった。あなたの身になにかあってからでは遅いんです!!

……

申し訳ありませんが、あなたを拘束させて頂きます

拒否します……

何を言ってるんですか……身の安全は保障します。この命に代えてでも

もう、誰も信じられない……

何が本当で、何が嘘なのか。あたしは自分の目で、この世界の真実を見たい……見なきゃいけない……!!

あたしのやり方で……青夜さんを取り戻してみせる……

あなたはわかっていない!!

……

そんなこと、青夜くんはきっと望んでないよ……

すみませんが、力尽くでも拘束させて頂きます

やっ……離して!!

おいっ、ヴァイス、なんとかなんねーのか!?

ご主人様、あの子を助ければいいんだよね?

お、おう……できそうか?

もちろんなの

 すると聖剣は宙に浮き、

 その切っ先はラウへと向けられた。

え……

なんだあの剣は?

ぐはっ……

えっ……

 腹を聖剣が貫通し、崩れ落ちるラウ。

や、やめろヴァイス! いくらなんでもやりすぎだ!!

はい?

ロ……ローザ様……ご無事ですか……?

 虫の息で呟くラウ。

う……うそ……しっかりしてください!

ごめんなさい……また心の傷を増やして……しまいました……

ここまで……あなたを……追い詰めるつもりは……なかったんです……

僕は……ただ……青夜くんとの約束を……

いや……

ローザ様……いつも刺激をありがとう……ございました……

……貴女とは一度チェスでもしてみたかったです

そんな……

どうか……気をしっかり

青夜くんを……信じて……あげて……

いやああああ!!!

そんな……お、おいっ、しっかりしろ!

撃てー!

弾かれる! なんなんだあれは!

ヴァイス!

大地さん……ミドリ……さん

ダメだ、取り囲まれてる!

ラウさんまで……あたしのせいで……

おい、ローザ! しっかりしてくれ!!

ったく、どうすりゃいいんだ!!

第二章 最終話『現実』

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