一方その頃、ローザを欠いた研究チームは、隕石から採取したとある破片で実験を行っていた。

これと高エネルギー結晶体を組み合わせれば

隕石の破片にこんな不思議な力があるとは

さすがですドクターヨドヤ

ローザ様がいない今、私達でこの地球を守らなくてはいけませんものね

うむ。だから言ったんだ。
ローザだけに頼り切っていてはいかんと

よし、官邸にいくぞ

発表ですね。人を集めてもらいましょう

新たな宇宙船の開発に成功したとのことですが・・・ヨドヤ班、報告を

新たな……とは?

おう。
抗重力装置のようなものだ

これを旅客用宇宙船に搭載すれば、慣性飛行の必要がなくなり・・・

2日ほどで月へ行ける

2日だと?

怪物の襲来元である、月の調査というわけですか

そもそもあの隕石の軌道はおかしかったんだ。どこか作為的でなあ

コントロールされて地球に衝突したとローザも言ってただろ

ふむ・・・

そういや、ローザは見つかったのか?

ああ、しかし今は廃人のようになってしまっておる。
一緒にいた不思議な少年も――

いい。少年など興味ない

だから私は前から言ってたんだ。ローザだけに頼るのはよせと

ヨドヤ先生、長官の前でその発言は……

いや、構わん。ドクターローザに科学のいろはを教えたのはドクターヨドヤ、君だからな

そうなんですか!

ああ、幼いころから知っているぞ!

・・・というか幼いころしかしらん。
なんせ6歳になるころには私の知識を超えていたからな

そんなドクターローザ抜きで、我々に未来はあるのでしょうか・・・

ああ。
今更遅いかもしれんが、色々と改革をしていかねばならん

ったく、使えねえ奴らだなあ

先生……

だからこその、この調査船だ

高エネルギー結晶による動力の軽量化、さらには抗重力機体と小型核融合炉が半永久的飛行を可能にします

この船は人類にとって革命となるだろう

さすがだ、ヨドヤ君

しかし、渡航中の食料問題や宇宙放射線による白血病などのリスクヘッジは済んでいるのですか?

知らんがな。
私のやるべきことはもうやった。
あとはお前らで何とかしろ

ううむ、とにかく今後の方針としては――

やはり月へ行くべきだろうな

ふむ

まあ、何よりの問題はパイロットだろうな!

私が行きたいところだが、体力身体能力的に不適合である。
引きこもり体質だからなハッハッハ

・・・科学者というのはどうしてこうも変わり種ばかりなんだね

みんながみんなそうゆう訳ではないのですが・・・

無重力訓練をクリアしている飛行士なら、何人かご用意できますわ

ふむ・・・コントロールするための育成に少し時間をかければ月へ行ける、というわけか

もっとも優秀な人材は青夜君でしたが・・・

おらん者を嘆いても仕方ない。
早速パイロット候補を連れてきなさい

はっ。

・・・本来こんな短期間で進めるプロジェクトではないのだが。やむおえん

そうだ。ゴチャゴチャ話し合ってる暇があったら頭に汗かいて足を動かせ

えらく体育会系な科学者だな

すみません長官

いや、かまわん。面白いではないか

あんたの顔には負けるがな

・・・では、研究班はスケジュールを決めて稟議書を持ってきたまえ

我々人類は、月へ行く

反逆の狼煙をあげるぞ

第三章 第一話『狼煙』

facebook twitter
pagetop