僕の別荘の前にいたジュリオ王子。

 相変わらずの笑顔を見ながら僕は、

ティモシー

どうしてここに?

ジュリオ王子

いや、婚約破棄を突き付けたティモシーの様子を見に。……全然平気そうだな

ティモシー

うん、だっていずれそうなると思っていたし?

ジュリオ王子

……それは、どういう意味なのかな?


 ほんの少し声音に変化があったような気がしたが、ジュリオ王子は相変わらず笑顔なので気のせいかなと僕は思った。

 そしてどうしてそう僕が思ったのかについて聞かれたので、

ティモシー

だってジュリオ王子は僕と“親友”だし。

婚約とか結婚とかそんな相手じゃないような気がしたんだ。

だから婚約破棄は順当で、これから“親友”になれるのかなって

ジュリオ王子

なるほど。それはそれは……なるほど

 なるほどと繰り返すジュリオ王子。

 納得してくれたのだろうか? そう僕は思いつつも、

ティモシー

でもどうしてこんな別荘に来たのかな?

ジュリオ王子

……ティモシーがいるらしいから、ここに来たんだ

ティモシー

そうなんだ。でもおつきの人もいなくて危険じゃないかな?

ジュリオ王子

……それはティモシーもそうじゃないか。

使用人も護衛もここは少ないぞ

ティモシー

そうだね。その方が静かでいいかな


 あまり仰々しいと何かあったのかと思われてしまうしと僕が思っているとそこで、じっと真顔でジュリオ王子が僕を見た。

ティモシー

どうしたの?

ジュリオ王子

……そうやって小首をかしげるティモシーは可愛いなと思っただけだ

ティモシー

! ぼ、僕だって前よりは男らしく……

ジュリオ王子

なっていないな。気のせいだ

ティモシー

ひ、酷い……

ジュリオ王子

そんなどうでもいい事より、ティモシーからちょっと話が聞きたいから、別荘に入っていいか?


 そう僕はジュリオ王子に言われたのだった。

pagetop