お試し・ピンク髪の子
あ、あと一回! あと一回やったら絶対取れっから!!
全然駄目じゃない
だ、誰が駄目なんだよ! 俺が出来るって言ったら出来るんだ!! 待ってろよ
ねぇカケル
な、何だよ静かにしてくれよ
ねぇ、カケル。私のこと、好き?
ななな、なんだよ急に……!
ううん。何でもない
……ほっ
ねぇカケル
別れましょう?
お試し・ピンク髪の子
それっきり、会って無いのか?
ああ。ってか、さっきフラれた
お前素直じゃないからな
自分で言うのもなんだけど、ツンデレって損だよ。だって、他人にも自分にも嘘つくんだから
じゃあやめれば良いのに
好きな人前にすると駄目なんだ。どうしても恥ずかしくて、見栄はりたくなって、強がりたくて苦しくなる
それって本当に好きって言えんのかな……
分かんない。でもあの人凄く綺麗だし、優しいし、料理も美味しい。それに、あの人見ると凄いドキドキする
まぁ、そりゃあ確かに恋だわな
だよな? なのに俺は、あの人を大切にするどころかいつも自分の為に見栄はって……
……それでもさ、お前は言えるじゃんか
え?
俺は言えなかったよ。大切だったはずの人に
俺、ダルデレだったから。何をするのもダルくて、彼女にやってもらってばかりで。でもダルくて礼どころか挨拶だって出来なかったよ。そして、一言も発さなくなったら、彼女はもういなくなっていた
その喪失感でやっと気づいた。己の過ちに
オヤジさん……それ多分デレてないよ……?
まぁ、言い訳だわな。とにかく、お前は言うことが出来るんだ。好きな人に、「嫌い」って言うことが
分かってくれる人は、分かってくれるさ
……うん! オヤジさんも、頑張って!!
余計なお世話だっつーの
ナオミ!!
……!
おーい、ナオミちゃんこっちー!
はーい!!
それじゃあね、二号さん
……に
……二号?
俺が苦しむ程愛していたあの人にとって、俺は二号だったのか……?
……ねぇ、カケルちゃん
何だよ! 笑いたきゃ笑えば良いだろ!?
うふふふふっ
わ、笑うな馬鹿!!
まったく、カケルちゃんは素直じゃないんだから
もう一回チャレンジしてみようよ
え?
いもちゃん取り
そんなの今更やっても……
カケルちゃん、何時も逃げ腰なんだよ! もっとがむしゃらに追いかけてみなよ。私分かるもん
……あの人、多分カケルちゃんのこと好きだよ
……ほ
本当かよ!?
うん!
うーん、取れねぇ。こいつ鬼ムズェ
カケルちゃん何やらせても不器用だねー貸してみ?
……っ!
ぽちっとな
やったね!
あ、有難う……助かったぜ
でも、何でわざわざ俺にここまで……?
格言を言ってあげる!
ん?
本当の愛はね、自分より、本当に好きな人を思いやるものなのだよ
もっともらしいこと言いやがって……普段はポエム描いてるような奴の言うこととは思えん
そ、それを言うなこの野郎!!
と、ともかく有難う。今からじゃ遅いかもしれないけど、やれるだけやってみるよ
……これで、良かったんだよね
本当の愛はね、自分より、本当に好きな人を思いやるものなのだよ
走っている途中、アイツの顔と言葉が頭に浮かんだ。あの時聞いた時は、俺はナオミのことしか考えてなかったけれど、あの言葉ってもしかして……。
……いや、ないない。アイツに限ってまさか
けれど……
……こんな感情、初めてだ
ふいに手を掴まれた時、不覚にもドキッとしてしまった。あの感覚は、脈打って止まらなくなるドキドキとは違って戸惑いがあったけれど、どこが気が楽になった。高揚せず、見栄もはらず、強がりもしていなかった。
それって本当に好きって言えんのかな……
分からない
とにかく、お前は言うことが出来るんだ。好きな人に、「嫌い」って言うことが
分かってくれる人は、分かってくれるさ
分かってくれたら……
あー。何で素直に好きって言えなかったんだろう。これもある種のツンデレ……なのかな
おーい、探したんだぞ!!
想いは伝わった……って、いもちゃん持ったまま!?
ううん、やっぱこれはお前に返す
返されても、うーん。私の趣味じゃないし……
やっぱり、人の力で取ったものをプレゼントするって無いよなって思って
ま、それもそうだね
それに俺、向き合う相手間違えてる気がするんだ
他にも好きな人いたの?
うん、多分
多分で大丈夫?
じゃあ、手を繋いだらドキドキして、明るい笑顔が離れなくて、何の気も遣わなくていい人って、好きな人に入る?
ちなみにそれって、私のことじゃないよね?
……
うるさいってね!
……嫌い
え
笑顔が可愛くて、さらさらピンクの髪した、少し冷え性のお前のことなんか嫌いだよ、多分、凄く嫌い!!
……
……やっぱり、駄目か
……私は好きなんだけどな
え
君のこと、全部好き
……っ
俺は嫌い、お前のこと、全部
……の、逆
……!
まったく、不器用な奴だなぁ!!