帰ってきた。
俺の故郷に。
駆けつけた母は泣いていた。
もう目覚めないと思ったらしい。
弟が言った。
「おかえり兄貴」
と……。
俺は「ただいま」と返答した。
それから入院生活が少し続いたが、医師はもう退院できると俺達家族に告げた。
マチも無事に退院出来ただろうか。
学校に通えるくらいまで回復したら、すぐにでも彼女を探しに行こう。
必ず再会してみせるさ。
しかし暇だなー、マチに電話番号とか聞いておくべきだった……
コンコンッ
扉を叩く音がした。
誰かが病室の向こう側にいるようだ。
どうぞ―――
失礼します……
?
誰?
初めまして。北野マユミ(きたのまゆみ)といいます
あ、ノ……神谷ユウキです
はい。知ってます
あ、そうなんですか……
はい
……
……
やばい気まずい。
え、何この娘……。
すごいヌルッと入って来たけど……。
兄貴!
おお―――弟よ! 助かった!
な、なにが?
いや、こちらのこと! それよりどうした?
彼女……、マユミさんのことは俺が説明するよ
ごめんなさい、コウタさん。初めて話す人だと緊張しちゃって
なんだお前達、顔見知りか?
うん、そのことは後で話すよ
?
彼女は……、マチさんの『親友』だ
……
……
ええっ!!!??
マチとは、同じ学校に通ってます
いやいやいやいやいや!!! ちょっと待て待て待て待て!!!
ちなみに兄貴は混乱すると、同じ言葉を連発するよ
そうなんですか
なんでコウタがマチちゃんのこと知ってて!
なんでマチちゃんの親友と知り合いで!
なんで俺がマチちゃんと面識があるのを知ってる感じで!
なんでマチちゃんなんだ!?
兄貴、『なんで』と『マチちゃん』が多いよ。それと最後の一言がよく分からないや……
!?
ユウキさんに伝えたいことがあったので来ました
お、おう! もうなんでも来いや!!!
「マチが……、帰ってきてません……」
―――なんだと?
兄貴、マチさんはおそらくまだ向こうの世界にいる!
……
私はマチを助けに行きます、ただ、それだけ伝えに来ました
ちょっと待て! 助けにって……向こうに行く方法が……
そんなの知りません!
……
マチは私の最初の友人なんです。何が何でも連れて帰ってきます
……
それでは!
そう言って、マユミは部屋を後にした。
今の一言で、マチが彼女にとって、どれだけかけがえのない人か理解した。
俺は……。
どうすればいいんだろうか。
ま! そんなもん、決まってるよな―――
兄貴……今何考えてる?
マチ……。
待ってろよ! 今迎えに行くから!!!
そりゃお前、異世界へ行く方法だよ!
ハァ……、やっぱりこうなるのか
弟よ! 明日から作戦会議だ。マユミちゃんも呼んで来いよ!
もうここでやればいいでしょ……。マユミさんもさっさと出てきたら?
チラッ
おーまだいたのか! よろしくな、マユミン!
マユミンって……
俺達は『チーム・マチルダ』だ!
チーム・マチルダ……、悪くないです!
また大変なことになりそうだ
第一部:最終章 終
ご愛読、誠にありがとうございました。
第二部もよろしくお願い致します。