な、なんだ……これは!?




 世界の創造神は、信じられない光景を目の当たりにする。


 宮殿に存在する部下、総勢千人の兵士が全員、この場で倒れている。


 神は瞬時に悟った。


 正確には倒れているではなく、『倒されている』と。




創造神

誰がこんなことを!



 幸いこの中に息絶えている者はいないが、重度の怪我を負う者が多数いる。


 これには一刻も早い応急措置が必要だ。


 しかし、すぐに治療に移れない原因がある。




「た、助けてください……」




 この惨劇が現在も、隣の部屋にて続いているからだ。


 神はこの宮殿に侵入者がいると聞いて駆けつけた。


 だが少し遅かった。


 血の海と化した扉までの床を、一歩一歩彼女は前進する。


 侵入者の元へ無表情で突き進む。


 


創造神

お前、そこで何をしている?

やっと降りて来たわね……創造神!

創造神

そうよ、ワタシは世界を創造した者

世界の管理も出来ないくせに……!

偉そうに神様面するな!!!

創造神

なるほど、私を恨んでの犯行?

あんたのせいで、私の家族はみんな死んだ!

創造神

ん、その赤髪……、もしかして……

ふん、覚えてて貰わなくて結構よ!

創造神

私を前にして平然と立っていられる者

名は……













「火の賢者・ベル」









創造神

だったか……

火の賢者・ベル

あんたが生み出した『竜』のせいで、私は家族を失った!

創造神

それは、すまない……

火の賢者・ベル

絶対に許さない……私の業火で、あなたにも同じ苦しみを与える!

創造神

だがそれは、他の人を殺めていい理由にならない。

お前もあの『竜達』と一緒よ

火の賢者・ベル

黙れ! 黙れ! 黙れ!!!






火の賢者・ベル

燃やす燃やす燃やす燃やす燃やす燃やす!!!!!! 全て燃やして殺してやるわ!!!!!!

創造神

話が通じない人なのね……分かったわ





 荒れ狂う火の賢者を前に、神は最終決断をする。


 それは彼女にとっても、復讐者にとってもいい結果を生まないのかもしれない。


 だがそれよりも、これ以上犠牲者を出さないための、苦肉の策だった。






 

創造神

火の賢者・ベルよ……

火の賢者・ベル

え?

創造神

あなたを……この世界から追放する!

火の賢者・ベル

な、なに!?



























 

火の賢者・ベル

うわ! 眩しい!!!

創造神

さようならだ、ベル。『追放』は二度とこちらの世界には戻ってこられない

火の賢者・ベル

う、うそでしょ!? ちょっと待って!

創造神

安心しなさい。向こうでは怪しまれないよう、衣服は変更しておくから!

火の賢者・ベル

わけ分からないこと言ってるんじゃないわよ!!!

創造神

第二の人生を……精一杯生きて

火の賢者・ベル

この悪魔―――――――――――!!!!!!!!!!!!!!




















































 ベルが目を開けると、そこはすでに宮殿ではなかった。


 静まり返った、見たことのない場所。


 ここが『公園』という所であると、彼女は知らない。


 まだ……、知らない。





火の賢者・ベル

ここは、異世界……









「こんばんわー」





火の賢者・ベル

だ、だれ!?






 突然話しかけられたベルは、軽く尻餅をついた。




こんな時間に子供が一人は危険じゃよー

火の賢者・ベル

え? 何なのあんた?






 ベルはまだ、年齢という概念で見れば十歳にも満たない。


 そんな『少女』が夜中に一人という事実は、世の中が『物騒』であるなら、確かに危険なのかもしれない。




あなたの名前は? 聞かせておくれー











 少女は、名を問われる。


 初めての異世界、初めての異世界会話、初めての異世界自己紹介。


 彼女にとって今日は、初めてづくしのようだ。







































火の賢者・ベル

私は……ベルよ!

























第一幕 終















【真相編】 第一幕『炎の理を極めし者は、最期に笑うことが許されなかった』

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