藍斗

んっ……
朝か……

遥香

おはよー

遥香はまだ少し眠そうな声とともにテントから這い出てきた。
眼鏡をはずし、川の水で顔を洗っている姿はとても気持ちよさそうだ。

遥香

それにしてもみんな起きてこないなぁ

藍斗

時間なくなっちゃうしね……
遥香は二人のこと起こしてきて
僕は右京のこと起こしてくるから。

千恵里はまだしも、瑠美は普段時間にルーズなタイプではない。
寝坊は考えにくいなぁなんて考えていた。
すると、戻ってきた遥香は慌てた様子で話し始めた。

遥香

瑠美と千恵里がいない……

僕は胸の奥でちょっとしたざわつきを感じた。

藍斗

ちょっと周りを探してみよう。
5分後にここに集合ってことで。

集合時間が近くなり、そろそろテントの場所に戻ろうかという時に、遥香の叫び声が森の中から聞こえた。
僕は急いで遥香の元へ向かった

遥香

あっ……あっ……

藍斗

遥香!?

遥香

ち、千恵里ちゃんが……



凄惨
という言葉がこれほどしっくりくる場面に遭遇したくはなかった。


藍斗

死んでる……んだよね……

これだけの血を流して生きてる人はいないだろうが、現実を受け入れるにも時間がかかる。
当然だ。
あまりにも非現実が過ぎる。

遥香

瑠美と右京君は?

藍斗

急いで探そう

僕たちは急いで二人を探した。
生きているかさえ怪しい人物を探すのはこれほどまでに怖いものなのか……

遥香

…………

藍斗

…………


僕たちの間に会話はなかった。
僕たちの前には遺体があった。


その数は全部で3つ

遥香

ねぇ……もう……帰ろうよ……

藍斗

うん……でも……

そう。
3人分の遺体とキャンプセット
これらを抱えて帰ることはこの人数では到底不可能だ。

僕は警察に連絡をし、事情を説明した。
警察は向かうからそのまま不用意に動かないようにと言った。

遥香

それにしてもひどいね……

遥香は千恵里の頭をなでる。
警察の人間ではないが、死因は刺殺だと言い切れるほどの刺し傷から大量の血があふれていた。

僕は残りの二人のを眺める。
右京には目立った外傷はない。
瑠美は首元にひも状のものがこすったような傷がある

藍斗

瑠美ちゃんはたぶん絞殺
右京は……わかんないね……

非現実的すぎるが故か、このような会話でさえも心の安らぎになっているのか

その事実が僕らの日常を少しずつ蝕んでいるような気がした。

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