遥香

……

藍斗

……

夏の暑い空に蝉の声が響き渡っている。
スマートフォンを見ながら本当なら今頃は洞窟に行っていた時間じゃなかったかなぁなんて思う。

遥香

なんだか……こうしてると少し落ち着てきたな……

藍斗

そうだね……何というか……現実なんだって整理がついたっていうのかな……?

遥香

ひどいね……私たち……

また僕らの間に沈黙が流れる。

藍斗

遥香ちゃん?大丈夫?

遥香

ちょっと……トイレに行きたくなっちゃった……

藍斗

あっ……ごめん……

遥香

気にしないで

藍斗

でも、そういわれると僕もそんな気がしてきたな……

僕らはそれぞれ用を足すために離れた場所へ向かった。

藍斗

おそいな……遥香ちゃん……
迷ったのかな?

タイミングがタイミングだけに不安にもなる……

でも、そんなことは心配しなくてもいい

藍斗

うっ!

藍斗は頭を押さえてうずくまる

藍斗

なんでこんなことをするんだ……
俊也!!

藍斗は僕の名を呼んだ。
それにしてもなぜとは、とぼけた質問をするものだ。
そんなの、僕が君を、もっと言うなら君たちを殺したかったからに決まっているだろ。

正確には死体が見たかったということなのだけどね

藍斗

死体が見たかった……?

そうだよ。
だからわざわざみんな別の方法で殺した。
刺殺、毒殺、絞殺。
ちなみに遥香はもう死んでるよ。死因は撲殺だ

藍斗

僕のことも殺すの?

もちろん。別の方法でね

藍斗

な、なにをするんだ!?

何って……こうするんだよ……




藍斗

や、やめろ!!

僕はこの光景を素直にきれいだと思った。
耳をつんざく声、鼻をつく臭い。
すべてが芸術的だ。

僕は藍斗……もはや藍斗であったものの前にしゃがみこんでスマートフォンを構える。

僕は写真フォルダを開いて画面を操作し、満足感に浸る。
5人分の死体の写真……
それぞれがそれぞれの最期を晒している。
僕の中にとどめられている……。

特に彼らにうらみがあるわけでもない。
ただ、そばにいやすかった。居心地がよかったと言えるのかもしれない。

遠くでサイレンの音が聞こえる
一応嘘はつくつもりだ。
ただ、逃げられるなんて思ってない。
後悔もない

いや、溺死の死体を見れなかったことが後悔かなぁ

太陽が僕を責め立てるように照らす。


この世界に『死体』という名の芸術を……

ありがとう

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