エルカ

どうしたの?

 なんで、ソルがここに居るのだろう。
 そうして、そんなに焦っているのだろう。

 私には理解が出来なかった。

ソル

……逃げるぞ

エルカ

逃げ場所なんてないよ。お爺様の大事な書庫を穢してしまったもの

逃げるって何処にだろうか。
今までは地下書庫が私の逃げ場所だった。

だけど、そこには異物を落としてしまった。

もう、あそこは穢れてしまった。あんな穢れた場所になど逃げたくない。



おかしい。


ソルの目が優しいのが、あまりにもおかしい。
だけど、昔はこうやって、たまに優しい目を向けてくれた。

ソル

行くんだよ………っ

エルカ

???

力強く引っ張られたら抵抗なんて出来なかった。

抵抗する気力なんて残ってなかった。

抵抗する必要なんてなかった。

エルカ

……っっ

米俵を担ぐみたいに、持ち上げられるとそのまま運び出された。

やるべきことは、やったのだから………
あとは、証拠を残して容疑者がいなくなれば……それでいい。

私は、炎の中に残るつもりだった。

私を助けるであろう、兄さんは仕事だから帰ってこない。私を助ける者なんて、いないはずだった……

何で、彼は私を助けようとするのだろう。
私を助けたところで、何も良い事なんてないのに。

 



ザワザワと色んな人たちが集まってくる。

何かを叫んでいるが、言葉を聞きとることは出来なかった。


そこで意識は途切れたのだ。

このまま、目覚めたくなかった。

エルカ

(こういう時は…………)

頭の中に、開かれた本をイメージする。

次に、本に描かれていた魔法陣を思い出す

あとは、本に書かれていた呪文を頭の中に浮かべる

エルカ

(そして、目覚めたのがこの図書棺)

エルカ

(何か手違いみたいなことがあったけど、これで予定通りに引き篭もれた)

 周囲の本を見渡す。

エルカ

みつけた

一冊の本を手に取って、それを抱きしめた。


これは、私が完結させることが出来なかったプリン王子の物語だ。


未完の物語を完結に導くなんて無茶な話だ

エルカ

……そう……途中までは、幸せな物語だった……よね

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