ここはノスタルジーの町、浅草。
そして隅田川を挟んで隣町にあたる向島。


観光や祭りで賑わう浅草を陽とするならば、
向島は上流階級の富豪が住み、
各界の著名人がお忍びで来る料亭が軒を連ねる陰の町である。

川の向こう側の人たちはいやしいから関わるんじゃないよ

と一昔前の向島の人々は浅草の人々の事を侮蔑していたという。


それは浅草の隅田川寄りには靴屋が点在していて、江戸時代のえたひにんが身分の低さから足元の仕事しかさせてもらえなかった事が所以だからとされている。

それでも半世紀以上前の話にはなるが向島の日活撮影所で映画が作られて、
浅草の六区通りで映画が上映されるという黄金期もあった。

浅草と向島はずっと昔から持ちつ持たれつ、
隅田川の流れに寄り添うようにして浮世を共にしてきたといえる。

でもそんな湿っぽい話は今日は無しだ。

だって今夜は土曜の夜

隅田川の花火大会
なのだから

エピローグ

新しい光

織原経華

かぎや~!!!!!!

小暮忍

織原経華

セイッ!
たまや!
へイッ!

小暮忍

…たまや

織原経華

まあ言っただけ良し!
にゃんにゃん先生!
今の花火に何をお願いしたんですか?

小暮忍

花火にそんな風習ないだろ。
あったとしても企業秘密だ。

織原経華

従業員の私にも!?
私の願い事知りたくないですか?
教えるから教えて下さいよ。これ等価交換ですよね?

小暮忍

パチンコみたいに言うなよ。
それに願い事はそうそう気安く他人に言うもんじゃないよ

織原経華

願い事は口にしないと叶わないというのが両親の教えです。
だから私高らかに宣言します!

織原経華

たとえこれからどんな苦難が待っていようとも、
私織原経華は小暮忍さんを未来永劫お慕い申し上げる事を心に誓います

小暮忍

悪い。花火で何言ってるか聞こえなかった

織原経華

な、なんやて~!!

菅原大吾

よお、竹馬の友!
とその恋人。

森加奈子

経華ちゃん、お酒とわたアメ買いに行かない?
あそこのテキ屋さんが患者さんだからうんとマケてくれるの!

織原経華

イエッサ!

織原経華

にゃんにゃん先生の分までめいっぱい取ってきてあげますね!

小暮忍

俺は君のちょっと一口わけてもらえればそれでいいよ。

織原経華

まあ遠慮せずに!
でっかい花火みたいなの作ってくるからお楽しみに~
アディオス!

小暮忍

忙しい奴だな。

菅原大吾

どうよ、忍。女を乗り換えるとホッとするだろ、何かと?
ウハハハハ

小暮忍

やっとお前が加奈子を選んだ理由が分かった気がするよ

菅原大吾

だろ!?
…ダセえ事聞くようだけどさ。
お前これから何かやりてえことってある?

小暮忍

どうした急に?

菅原大吾

夢とか欲しいもんとかさ。
そんなクソガキみてえな事ばっかり考えちまうんだよなあ、最近。

菅原大吾

本当に俺たちが欲しかったのって一体何だったんだろうな

小暮忍

さあな。
忘れちまったよ。

小暮忍

とりあえずいま目の前にある事が自然に流れてくれれば俺はそれでいいよ。

小暮忍

まあ、なるようにしかならないからさ

菅原大吾

だな。マジでそれだよ。
にしてもとにかく何か今夜は最高だな。
よくわかんねえけど涙が出るよ

小暮忍

俺もだけどさ…
お互い女には見られないようにしないとな

とりとめのない会話をかき消すようにはしゃぎまくる祭囃子。


いつか祭りが終わる事を本当はわかりながらもずっと踊り続ける大人たち。


人影と町並をぜんぶ吸い込んでひっそり流れ続ける飴色の隅田川。

そんな余韻をぶち壊すあの声が聞こえて、
俺たちはシレっとタバコと街の火を消した。

宵町の整骨師

小暮忍

今宵の花火
そして
ストリエの魔法
に包まれながら

終幕

最終章 或る光 

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