野沢心を見ていると、どうも昔の自分と重なってみえる。嘘をついていたあの時の自分、酷かったあの頃、二度と戻りたくないあの日々。
野沢心を見ていると、どうも昔の自分と重なってみえる。嘘をついていたあの時の自分、酷かったあの頃、二度と戻りたくないあの日々。
くそ、俺は成長してないな
どういう意味?
まあ、昔の話ですよ
昔……そう
六十部はこれ以上、俺の事について聞こうとしなかった。聞かれても答えづらいし、ちょうど良かったかもしれない。
さて、これからどうしましょう? この様子だと聞きたい事を聞いても無駄そうね
……
もう、紗良ちゃん。それだと怖くて話せないよ
ごめんなさい。私、そんなに怖いかしら?
十分怖いですよ
その上から目線とか、堂々とした態度が十分俺から見ても怖いですよ。
あら、鮫野木くんのくせに生意気ね
どこのガキ大将ですか
あら、私は女よ
知ってますよそのぐらい
遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえる。遠くから中庭に向って女の子が叫ぶ。
心ちゃんをどうする気ですか!
日泉さん
どうもしないわ。ただ、調べ事を彼女に聞きに来ただけよ
調べ事!
何か思い当たる事があるのか、日泉は慌てている。
やめてください! 心ちゃんは関係ないです!
――っ
心ちゃん
野沢は突然、立ち上がった。野沢は自分の震える右手を押さえている。彼女は何か怯えている用だった。
ぼ、僕は――
心ちゃん?
僕は悪くない
あっ
そう叫ぶと野沢は走り出した。野沢が何か思いつめた横顔を鮫野木は見逃さなかった。
アイツ……
やっぱり、俺とアイツは似ている。似ていたから強く当たったんだな。
鮫野木くん……逃げないでよ
…………
また思いだしてしまった。俺もいい加減変わらないとな。
おい、逃げるのか
逃げる
鮫野木の言葉を聞いた野沢は足を止めた。
ああ、二度も言わせるな
じゃ逃げは、悪いんですか
悪くない
鮫野木は一歩ずつ近づいていく。
はぁ? 何言ってるんですか?
逃げるのは悪くない。ただ、逃げる場所が悪いんだよ
一人で逃げたらな、迷うんだよ。駄目な方にな
そう、昔の俺みたいになってしまう。でもお前は……。
じゃ、僕はどうすれば良いんだ
たく、あるだろここに最高の逃げ道が
鮫野木は親指を後ろに指した。
へぇ?
分かんないのか。守ってやるって言ってるんだ
良いんだね。僕を……助けても
だから、二度も言わせるな
目の前に助けられる物があるなら、助けてやりたい。もし、彼女が俺と同じ悩みで苦しんでいるのなら助けられるはずだ。昔、小斗ちゃんが俺を助けたように今度は俺が野沢心を助けてみせる。