賢誠は初めて見る外国人ということで詰め寄っていた。好きな食べ物は何か聞くと、ドイツ辺りだと思われる料理名があげられた。日本語がペラペラなのは、もう十年以上はこの国に滞在しているとのことだった。
賢誠は初めて見る外国人ということで詰め寄っていた。好きな食べ物は何か聞くと、ドイツ辺りだと思われる料理名があげられた。日本語がペラペラなのは、もう十年以上はこの国に滞在しているとのことだった。
そうだ! 外人さんでも人具って出るんですか!?
……あぁ。出る。俺のは、役に立たない
どんなのですか!? 見せてください!!
ポスン、とルームフェルに頭を撫でられる。十八の男としてはそれは嫌だが、その手がスルリと賢誠の目の前に降りてきて、色濃い青色の光が賢誠の髪を揺らした。それは男の手の中で小さくなっていくと、薄っぺらい形状になって……――光が弾け飛ぶ。
片眼鏡だ。
鼻に引っかけるタイプのもので、ルームフェルの手にはあまりにも小さかった。それを、賢誠には両手でそっと持ち上げる。
これで何が見えるんですか?
さぁ。かけたことはない
? 何でかけてみないんですか?
目は悪くない
あぁそうか、と賢誠は思う。片眼鏡が出てきたら老後の時に役に立つだろう、ぐらいに思う。
片眼鏡をかけてみるが、あまりにも大きいので鼻に引っ掛かることはない。虫眼鏡を持つように、賢誠はつまむ。
眼鏡の向こうはなんら変化がなかった。目の検査をするように片目だけを閉じてレンズ越しの世界を眺める。
それでも、何も変化がない。
度の強い眼鏡をかけて、ボヤけることもない……ーー。
サトミ。こんな人具で何ができると思う?
えっと……文字を大きく見るぐらい?
もう一つある
ルームフェルは小さく笑って、賢誠の頭をまた撫でる。
『そんな人具で何ができる』……――そう敵に思わせることで、油断させることができる
賢誠はそういえば、昨日もそんなことを言ったな、と思い出した。
硫酸や塩酸で出来たトマトが飛んできたら、何ができると油断したらぶつけられて酷い目に遭う、という考えでしかなかった。
だが、敵の意表とを突くという戦術的な使い方ができるという考えてではない。
これは意図的に油断を産み出し、隙を作ることができる。これなら眼鏡がどう使えようとも構わない。これはすでに存在しているだけで『武器』だ。孝臣のトマトだって同じように使える。
賢誠はふと思った。
それは、賢誠の人具も同じではないか。
戦闘時に人具を出現させた時、それで警戒するかバカにするかは敵次第。
これは記録しておかねば!
賢誠は、客室のテーブルに置いてあったノートをひっくり返す。
鉛筆を握って『そんな人具で何ができる、と思わせることができる』と書き連ねる。それを上から見下ろしていたルームフェルは呟くように尋ねる。
劇薬でできたのか?
いえ。まだ試していません。孝臣さんはお医者さんなので、忙しいと思うから。
でも、お酒はできました
酒で出来たならできるんじゃないか?
ボクもそう思います!
お酒でも十分攻撃できますよね?
敵にトマトをぶつけて破裂させればお酒がかかる。あとは弱い火炎魔法投げつけて着火。
敵を丸焼き!
お前、怖いこと考えるな
それを言ったのはルームフェルではない。いつのまにか部屋に入っていた朝顔だった。
呆れたような朝顔に向かって、賢誠はルームフェルの人具である片眼鏡を突きつけた。彼の人具だというと珍しそうに感嘆を漏らす。
つくづく人具ってのは色々あるんだな。トマトに片眼鏡……ーーそれに、小石
クルリ、と朝顔は何故か後ろを振り向いて、空気を睨み付けた。
あんたは、どんな人具なんだ
見せたくないなら見せなくても良いが、と一言置いたルームフェルの前に、朝顔は両手の平をあわせた。そこに浮かび上がるのは青色の光。そこから、つーっと光は天に向かってのびると、先を膨らませた。ぴしゃん、と光が弾ける。
そこから現れたのは、白い花びらを持つ植物。
植物……?
曼陀羅華だ
そうだった。朝顔は、曼陀羅華の妖精なのだ。そうして、賢誠はよくよく思い出した。
曼陀羅華は別称『朝鮮朝顔』と呼ばれる強い幻覚作用のある植物だ。どんなドラッグバイヤーでも朝鮮朝顔だけには手を出さない。朝鮮朝顔の持つ幻覚作用は強すぎて、食べてしまうと加熱してあっても衰えることがない。根はゴボウ、蕾がオクラ、種子がゴマに似ているということで、数多の食中毒事件を引き起こす植物……――。
賢誠は、今さらになって、超怖い植物の妖精とこの一年を過ごしていたことに気づいた。
植物だが、周囲に強い幻覚を見せる力がある。気を抜けば周囲の連中が泡吹いて倒れる
お前の人具の方が使えそうだな
賢誠は、ふと思った。
孝臣は朝顔が妖精であることを知っている。それは、彼が生まれながらに持っている強力な透視能力の賜物だ。もしかしたら、この眼鏡にも同じ効果があるかもしれない! そして、雅が言っていた『何もない』というのが、賢誠でも目にすることが出来るかもしれない!
賢誠は片眼鏡を改めた着用して朝顔を見上げた。
しかし片眼鏡の向こうは残念ながら、朝顔をクッキリと写し出していた。猛烈に残念だ……ーー。
……朝顔さん。その胸元の模様、何?
模様?
ほらコレだよ……ーーて、あれ?
朝顔の胸元に浮かんでいた緑色の刻印を指差そうとすると、その印が見えないことに気づいた。見間違いだったのだろうか、と思って、もう一度片眼鏡を着用する。
すると、さっき朝顔の胸元に見た模様がまた見えたのだ。
もしかして、もしかするかもしれない、と賢誠は片眼鏡を何度かかけたり外したりを繰り返して確信する。
朝顔さん、胸元の模様って何!?
ルームフェルさんの片眼鏡かけると見えるんだけど!?
は? 模様?
何言ってんだコイツは、と言わんばかりの顔を向けられた賢誠だったが、ルームフェルにも片眼鏡を何度かつけたり外したりを繰り返してもらうと、確かに目には見えない模様があると彼も認めた。
賢誠は朝顔にそのままでいるように言って、片眼鏡越しに朝顔の体に浮かんでいる模様を模写しにかかる……ーーが、案の定、賢誠の画力は底辺値だった。似せて書いてはいるが、上手く書けておらず、もぷぅ、と頬は膨らんだ。
しかし、事態は急変する。
そのドヘタッピーな模様を見下ろした朝顔が、一瞬、顔を青くして賢誠の握っているノートを引ったくった。そのまま、ちょっと来い! とルームフェルを残し、賢誠を宙ぶらりんにして部屋を飛び出していく。
何がなんだかサッパリなまま、賢誠は屋敷の外まで連れ出されてしまうのだった。
夜風が心地よく火照った体を鎮める。
そこで賢誠は降ろされると、もう一度、賢誠が頑張った模写に指を差す。
お前、コレ、見えてたのか?
ルームフェルさんの片眼鏡越しに見えたんです。
ボクの視力だけでは見えないんですよ。
今も見えてません……――お顔が真っ青ですが、この模様って一体、なんなんですか?
――……持石の『契約印』だ。通常なら見えない
契約印?
契約印とは、文字通り、契約の印のことだ。
朝顔と持石の魂と魂を結んでいるという印。この印は魂を繋いでいる、といって差し支えない。これが無くなってしまうと朝顔と持石の間で繋がっている魔力は供給が切れ、主従関係がなくなる。
つまり、契約が破棄されてしまうということだ。
契約印は『魂の紋章』……ーー魂が持ってる情報を基盤に記される。その魂がどんな存在なのか、詳しく明記されてる紋章だ。持石は、朝顔の魂の詳細情報を知っていることでいつでも彼を好きな時に呼びつけることができるようになっている。
召喚術、みたいなものですか?
まんま召喚術だ。
召喚術師も、魔獣使いも、精霊使いも、やってることは同じ。
ただ契約する相手が違うってだけで、魂を結んで縁を繋ぐことで力を発揮する魔術なんだ
契約してるなら契約相手だけに効力が発行される。
それは契約印が契約書と同じだからだ。契約書とは、存在している間は効力を発揮する。破かれれば効力を失う。契約印もそれと同じだ。
賢誠がついさっき、ルームフェルの片眼鏡越しに見た朝顔の胸元にあった模様は持石の魂の紋章で、持石の契約してる妖精であるという印。自分の物に自分の名前を書いておいているようなモノだ。
つまり、ボクも朝顔さんの魂の紋章が分かれば契約できるってことですね!
そうだ。
だから、今、人魚が無理矢理契約させられてる。
涙は真珠になる。
食えば不老不死。
売れば大金になるって生きたまま切り刻まれている
!!!!
賢誠は、口をあんぐりと開けてプルプル震え上がった。開いた口が塞がらないとはこの事だ。
持石が住んでいる森には、数多くの人魚が逃げ込んでいる。持石の人を惑わす魔力で、今、人魚達は閉鎖的な空間でずっと平穏に暮らしているのだ。あの森全体に他人の魔力を弾き返す魔法やら召喚魔法を阻害する魔術が常時複数展開されている。
持石太陽は、絶対的な森守の魔術師。
森に住まう者達を圧倒的な力で守り通す、孤高の魔術師なのだ。
その持石は、たくさんの妖精と契約結んでいる。もし、仮に持石の『魂の紋章』が人手に渡り、森の守り主たる持石が隷従することになれば根こそぎ荒らされるのは必至だ。あそこは、朝顔のような魔のモノにとって最後の砦。
彼が居なくなれば森に生きる者達は住処を失う。
それどころか、生きることさえ危ぶまれる。
賢誠。本当に、お前自身は見えないんだな?
あれはルームフェルさんの人具があってこそ見えるんです!
分かった。俺は、この事を持石に伝えてくる。ここにいる友人に会いに行ったって伝えておいてくれ。賢誠、それとあの男には気を付けろ
? ルームフェルさんですか?
ただの客人にしては血の臭いが強すぎる。間違いなく人を殺すのを生業にしてる
さぁ、と血の気が引いて、賢誠はカタカタと震え出す。
で、ででで、でも!
ルームフェルさんを雪村家に宿泊させてやれって言ったのは三文字幸乃様ですよ!?
あの人、そんなヤバイ人だって分かってて雪村家に案内させたことになるんじゃあ……!
知らん。
とにかく気を付けろ。
さっきから仲睦まじいからな……それに、契約印が見えるってことは、アイツが乱獲者の主犯って可能性だって高い。
とりあえず、あの男は見張ってろ
朝顔はくるりと背を向けて、低く呟く。
場合によっては、俺が消す
ぞわ、と内臓がわし掴みにされた感覚だった。全身から、一層、血の気が引いていく。
そんな怖い人だなんて思ってもいなかった。
一緒にいて、ちょっと無愛想なだけのお兄さんにしか見えない。小さい子供が好きなんじゃないかとも思う。
自分から見た印象が良いほど、デジャビュを覚えるのは気のせいだろうか。でも、一年間一緒に過ごしてきた朝顔がこんな真面目な時に嘘を吐くような奴ではないのは賢誠も知っている。
暗雲が立ち込めている。
……雅姉さん、大丈夫かな……ーー
三文字幸乃の来訪。
織田信長との密会。
そんなタイミングで、血の臭いが強い男……ーー。
この大会が、無事に終わるようには思えなくなってきた。もしかしたら、この事態を招いたのは賢誠のせいかもしれない。
織田信長を客寄せパンダに使った、その対価……ーー賢誠は急いで部屋に戻る。そっと覗いてみると、ルームフェルの姿はなかった。
賢誠は布団に潜って目を閉じる。
この不安をちょっとでも解消できるのは……ーーやはり、賢誠にとってはあの人しかいなかった。
穴を抜ければ白い世界にクッキリと浮かび上がる黒髪の男に賢誠は飛びかかるように降りていった。
天之御中主は穏やかに微笑んで、賢誠を受け止める。
本から飛び出した文字列が優雅にこの空間を泳ぎ、草むらを作るかのように緑色の文字列が地面に群生している。そこから、亜鉛の元素記号が蛙のようにぴょんぴょん飛び出してきて、天之御中主があやうく踏みそうになると慌てたように文字の草むらへ飛び去ってしまった。
本だけがいっぱいあった時より、グレードアップしたように思えた。
どうしたんですか? ここ?
信者が増えたのだ。世界が賑やかになってきたよ、賢誠。お前のお陰だ。ありがとう
信者が増えた……?
それよりも、契約印の話だ。
それにしても、朝顔は心配しすぎだねぇ。
持石がそんじょそこらの魔術師に劣るわけがないのに
?
契約印は確かに、契約する時、魂の紋章を使う。
それは魂を繋ぐため。力を貸してほしいと乞い願うため。
だが、十ぐらいの能力がない人間が、五千を越える力を持っている相手と契約を取り付けられるか……ーー答えは否である。
召喚獣や、魔獣、妖精、人間の霊だって契約主が気に入らなかったら破棄することだってできるのだ。
だが、それはあくまでも持石の話だ。人魚達は普通の人間が相手なら勝てても、魔術師相手になってしまうと勝手が違ってくる。勝てる人魚もいるが、大半は負けてしまう。
日向のようなものだ。日向は村長の権限が強くて、民は反抗できず、圧政を強いられている。あれと同じで、人魚達の意思を上から押さえつけ、従わせる。
もしくは、契約する前段階。
人魚達の『魂の紋章』だけを扱えば、まずは呼び寄せられるものなんだ。
人魚だけではないよ。これは持石も例外ではない
本当に、一方的ですね
契約の仕方にも色々あるからね。日向の村長だって一方的だろう?
そこに住まう者のことを考えていない。
まぁ、持石なら呼びつけられても術を跳ね返すか、その阿呆を逆に呼び寄せて森に住まう者達の餌にしてしまうだろうが
ぽつっと天之御中主は穏やかな笑みでえげつないことを口にすると、白い天空を見上げて目を細める。
愚かしいことをする。
魂を結べば妖精も魔獣も召喚獣も、さらに大きな力を発揮することができる。
彼らの助力を得られることがいかに素晴らしいことか、互いに利益があるか、今の魔術師達はそれも忘れてしまったのか……ーー残念でならない
天之御中主はそう眉尻を下げると、賢誠には絶対にそんなことはしないように、と言った。
契約印のことは分かった。あのノートの中身は細かくちぎって投げておこう。
天之御中主は賢誠の頭をよしよしと撫でる。
賢誠は仕方ないので撫でられてやる。すると人形のようにハグしてくる。止めろって、中身は十八なんだぞ! 転生から一年経ったから十九だ!
賢誠。頂点に立つ者は、いつだって命を狙われる危険を孕んでいるものだ。
あの男が織田信長を狙ったのか、三文字幸乃かはたまたその息子か、誰を狙ったかは分からないが、これは彼らにとって初めてのことだとは思わないよ。
彼らには毎回のことだから、関わってしまったことで雅が関係を持ってしまっただけだ。
賢誠、決してお前のせいではないよ?
それに、織田信長を客寄せに使わなければ学校の閉校だってあり得たかもしれない。
お前がやったことは間違っていない。
それはどうか、忘れないでおくれ
それに、と天之御中主は呟く。
三文字幸乃はどうであれ、お前の姉はどうだった?
危ない人間なら雅は真っ先にそれを拒否するはずだ。
確かに、朝顔は長い年月を生き、数多の敵と対峙してきているだろう。経験、気配、その隙の無い佇まいから、彼は危険な人物と体が熟知しているが、それはあくまでも経験による平均だ。
これぐらいする人間は危険な人間が多いという予想でしかない
その分、お前の姉はそれを素通りして真実を見抜くんだ。彼女が嫌がっていないなら安全性は高いし……ーーお前だって、少なからず彼をいい人だと思ったのだろう?
それなら、お前の感覚の方が正解だ。お前はまだ、本能で生きている。余計な雑念が混ざっていない状態で人を見ることができる。お前の感覚も、信じてあげなさい
しばらくは敵じゃないと思ってて大丈夫?
あぁ。それに、武家へ放り込まれて暴れるほど馬鹿でも無いだろう
天之御中主は最後にまた、ぎゅーと賢誠を抱き締めるとその腕を離す。宙に浮かんで、蝶のようにパタパタ羽ばたいている本達の世界を浮上していった。
朝顔は外泊するという史上最強の出不精の元へ飛んでいた。
外へ出たには出たが、やはり根が出不精なので出掛け先の宿泊先で部屋に閉じ籠りっきりなのだ。
高級旅館で贅を尽くしながらも引きこもっている我が主は朝顔を見るなり、ふふん、と得意気に笑って大福餅を食いちぎる。口周りに粉をまぶしているのが気に入らない。
朝顔ってば心配しすぎ。この僕が魂の紋章を知られたぐらいで強制召喚されるわけないでしょ?
飛んできてる途中でお前が強いってことすっかり忘れてたの思い出した。
だから、今回は別件だ
分かってるよ。
あの男のことでしょう?
調べに行かせてるし、見張ってるよ。
もし、本当にあの普通は目に見えない紋章まで見えるというなら、あれは厄介だ。場合によれば消しておく必要だってある
珍しく、持石はクソ真面目に顔をしかめたが、口周りの粉がすべてを台無しにしている。
それだけじゃ無いことを伝えると、持石は案の定、目を瞬かせる。
気づかないとでも思ったのか、と朝顔は深い溜め息をこぼした。
昨日から、チラチラ透視魔法使ってるだろ。
そんなに気になるなら普通に見に来りゃあ良いだろ?
透視魔法は禁術指定されてる。使ってるのバレたら取っ捕まるぞ
き、気にしてないもん。
それに、なんで低能な魔術師達の法律に僕が縛られなくちゃいけないわけ?
女風呂覗くなんてしないもん。興味すらないよ
魔法の中には、いくつか低級でありながら禁術指定の魔法がある。
今回、持石が使っているのはそのうちの一つである『透視魔法』だ。
これは上級魔術で禁術指定され理由は持石が言った通り、阿呆な魔術師が女風呂を覗くという粗相を働いたからである。他にも、着物の中を透かして見るなど、様々な猥褻容疑で逮捕される魔術師を毎年のように輩出する禁術である。
他にも催眠魔法で眠らせて婦女を襲ったり、一部の拘束魔法が監禁などに使用されて禁術指定入りしている。
中には、これらの禁術魔法を会得し、卑猥な目的で魔術師を目指す人間もいるから厄介なのである。
とにかく、と持石は大福餅に手を伸ばす。
賢誠はまた魂をどっか飛ばしちゃったから、あの男の監視は朝顔、頼んだよ
まだ見てたのか
第一ね、朝顔はちょっとお馬鹿なんだよ。あんな巨漢を五歳児に見張ってろなんて酷すぎるんだ。あんな強面なんだよ?
怖いに決まってるじゃない。あの男を見張るのは朝顔に頼むよ。賢誠にはレイを置いておくから離れてても大丈夫
気にならないと言ったり、それで行動を報告するように言ったり。
今回はといえば、また別の妖精を配置するという。
やっぱり、気になってんじゃねぇか。会いに行ったらどうだ
会わない!
もう、賢誠には会わないもん!
気になんてなってないんだから!
見た目二十代とはいえ、齢四桁越えてる男に頬を膨らまされてもムカつくだけだ。
ムクムクと大福を貪る主に朝顔は苦笑しながらも溜め息をこぼすのだった。