ここは……どこだ……?

俺は……死んだのか?

……気が付いたか?

ジャン

…………てめえは?

反ゲイリー派の者だ。先を越されちまったけどな

ジャン

てめえも……奴を狙ってたのか?

誤解しないでほしいんだが、俺は別にお宅に獲物を横取りされて怒ってるんじゃねえ。ゲイリーが死ぬのを見れれば、俺は満足だ

ゲイリーは俺にとっても憎き敵だ。叶うならばこの手で殺してやりたかったが、お宅が奴を殺してくれたおかげですっきりした

ジャン

俺を……どこに連れていくつもりだ?

医者に決まってるだろ。これだけの出血だ、早く手術しねえとマズい

ジャン

出血…………

ジャン

……ざまぁねえな

ジャン

悪い……降ろしてくれ

何言ってんだ? 早く治療しねえと……

ジャン

頼む

…………ああ

ジャン

……ここまで来るときに、ガキを見なかったか?

いいや、見てない

ジャン

そうか……まぁいい

そういえば、子供を連れてるんだったな。すまない、子供と引き離すような真似をして

ジャン

そんな言い方するな。別に実子ってわけじゃねえ

……なら、なんで子供と一緒に行動してたんだ?

ジャン

そいつに……殺しを教えろって頼まれたからだよ

……殺し?

ジャン

親の仇を撃ちたいって……俺の目まっすぐ見て言ってきやがった。それ見たら、断れなくてな……

ジャン

けどな、付き合ってるうちになんか変な感じになっちまった。あいつに銃を持たせたくなくなってきちまった。あいつが、どれだけ復讐を望んでるとしても……だ

ジャン

だから、街を離れる前に……あのクソ野郎は殺しておきたかった。あいつの復讐を、少しでも終わらせたかったんだ

…………

ジャン

ガキが無理して殺しに走ることはねえんだ。そんなバカやらかすのは、俺くらいで十分だ

……もし、その子がゲイリーを殺してたら、どうするつもりだったんだ?

ジャン

つい最近ライフルを持ち始めた奴だぞ? そんなラッキーは起きると思ってねえさ

ジャン

これでクソ野郎は死んで全部終わった。あいつはもう、ライフルを持つ必要はなくなった。そろそろ年頃のガキに戻っていいはずだ

……もういい、夜露さん。早く立てよ。治療しねえとまずい

ジャン

そうだな……もうすぐ朝が来る

ジャン

夜露の出番は………終わりってわけだ

何言ってんだよ! お宅その子のこと大事に思ってんだろ!? だったら今頑張って生きろよ!! ここでくたばったら意味ねえだろうが!!

ジャン

ああ……夜明けだ

ジャン

なんだ……意外と清々しいじゃねえか

敵を撃てたな、ガキンチョ――――

ナタリー

ジャンさん……ジャンさん……!!

ダニー

あいつ、どこにもいねえじゃねえか……

ダニー

アイツの愛用のライフルがここにあるってことは……自力で移動したわけじゃねえな。まず、この血の量からして、自力で動けるわけねえか

ナタリー

ジャンさん……ゲイリーに撃たれてるはずなんです。早く治療しないとマズいはずなのに

ダニー

まずは君だけでも逃げよう。ゲイリーが死んだ以上大丈夫だとは思うが、万が一もある

ナタリー

ジャンさんを……置いて行けって言うんですか!!

ダニー

ここでいつまでも残ってたらゲイリーの一味に殺られるかもしれねえ。アイツを探してたせいで俺達が死んだら意味ないだろ

ダニー

ジャンの気持ち、伝わってんだろ? あんな不器用な奴が頑張って生かそうとしてたんだ。それを汲んでやれよ

ナタリー

…………っ

ナタリー

私は……これからどうすればいいんですか?

ダニー

親元に帰っていいんじゃねえか? 母方は生きてんだろ?

ナタリー

嫌です!!

ナタリー

お父さんのいない家に……居場所なんてありません

ダニー

…………

ダニー

……分かった、一緒に行こう。それがアイツの望みだったしな

ナタリー

……はい

ナタリー

ジャンさん……夜露さん

ナタリー

狙撃を教えてくれて……敵を撃たせてくれて、本当にありがとうございます

ナタリー

ダニーさん、このライフル……

ダニー

どうせダメって言っても聞かないだろ? くれてやるよ。もう持ち主はいないんだ

ナタリー

はい……

ナタリー

…………あっ

ダニー

……夜明けか

ナタリー

はい……夜が明けて朝が来る

ナタリー

ジャンさんも、どこかで見てますよね……

ダニー

…………そうだな

ナタリー

ダニーさん、街から出る前に、その……

ナタリー

メロンソーダ、飲んでいきませんか?

ダニー

ああ、いいね

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