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今更ですけど、なんで私は帝王に誑かされないのでしょうか
人聞き悪く、また吸血鬼的に悲しいこと、真顔で言わんでくれるかな
そういえば、出会った時の記憶もないんですよね
……それは
――はっ、もしや拾った?
えっ、拾われたのワシなの!?
でも、なぜなんでしょう?
――そりゃあ、惚れたのがお前でなく、ワシだからだよ
えっ?
惚れた相手に、魅了は使わんよ
吸血鬼の力と関係なく、接するのみだ
……帝王
なんだ?
つまり、吸血鬼になる前……人間だった時から、タラシだったと?
あれー、そういう話ダッタカナー
(――ふん)
『ねえ、エドガー。夜のお花も、とても綺麗ね?』
『あなたは不思議な人。昼の顔も、いつか見てみたいわ』
『ねぇ、エドガー。もし、吸血鬼なのだとしても……わたしの花は、一度きりで散るの。それを、覚えておいてね』
(――責められるべきは、ワシだけか)
でも、お仕えできて良かったです
そうか、ワシも……
毎月の事務処理とかも一苦労でしょうし
ん?
なにより、働き場所が限定されてますから
いやそれはお前のせいも
つまり私は、帝王にとって不可欠な存在!
(……ワシのエネルギーで動く人形なのも、忘れてるのかなぁ)
とにかく、ホッとしました
――どちらにしろ、俺から離すことは、もうしないがな
……近いです、帝王
嫌か?
嫌です
不便だし、それに……離れる時も、必要です
なに?
……私からも手をつなげる距離の方が、いいです。
魅了されてない、私なんだって……想えますから
(かつての、この方を……私は、もう覚えていない)
お前が望むなら、人には戻せないが……他の生き方を選べるぞ
(でもそれは、夜の帝王としては甘過ぎる、けれど優しい彼の側面だとわかる)
俺の力をお前に渡せば、人としての時間くらいはな
……らしくないですよ、帝王なのに
私がいないと、堕落一直線になりますし
堕落する必要も、なくなるだろう
孤独な闇は――闇に還るだけだ
……ダメですよ。
私を遺して、消えようなんて考えは
吸血鬼として華々しく散ることを、考えもする
怖い顔。
らしく……ありませんよ
それは――帝王、だからな?
帝王という言葉の意味、ご存知ですか
かつてそう呼ばれていた、という程度にはな
そう呼んでいる者がいる限り……その道を、閉ざしてはならないと考えます
――キャサリン。
お前こそ、怖い顔だ
……ありがとうございます、帝王
(――キャシー。君だけが、そう、呼ばなかったのにな)
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