PiPi-Pi！
PiPi-Pi！

どうした、カタラクト？
騒がしいぞ。
あまり音を立てるとルナライト波が乱れちまう。

PiPPi-PiPPi！
Pi-PiPi-Pi……！

ほう、そんな未来が見えたのかい。
それは楽しみだな。
騒ぐのも無理はないな。

Pi.

魔力の無いドール坊やが、アタシの元を出てからというもの、からかう相手がおらず退屈だったからな。久しぶりに腕が鳴らぁ。

Pi-Pi?

ああ、もちろんだ。
からかい甲斐があるからな、ドール坊やは。

Pi〜…

楽しみにしておけ、カタラクト。
ドール坊やを盛大に
もてなしをにしてやろう。

ゾクゾクッ！

あんた、どうしたんだい？
身震いなんかしちゃって、
風邪でもひいいたかい？

い、いや、なに……。
なんかものすごく懐かしいような恐怖感に襲われてな……。

それは無理もありません。
忌避の盾を奪っていったのは
恐らく『魔王ツヴァイ』！

とらえどころのない『魔王ツヴァイ』には、俺もかなり手を焼いています。

魔王……ツヴァイ……。
そんなのがいるんだね……。

んー……。
でもそういう感じじゃないんだよなぁ、
この寒気は……。

下積み時代に叩き込まれた、
あのトラウマの様な……。

アンタ、今度は難しい顔をしてどうしたんだい？

え……？
あ、いや、その……。

あ・や・し・い

まさか、アタシ以外の……。

女の話じゃないだろうねぇ！？

ひっ！
違います！多分違います！
いや、あってるかもしれないけど……

あー……話題変えてあげた方が良さそうだな……。

で、俺がこの地を訪れたのも、
『魔王ツヴァイ』の手がかりを追っての事なのです。

ラムディッシュさん！
エレザさん！
本当になんでも構いません！
何か最近変わったこととかありませんか？

んー……
アタシが知っていることといったら……
スレッジ様の嫡男ゴルデン様が
魔法を使えるようになった事かねぇ……。

スレッジ様って、
領主のスレッジ・ハンマ様ですよね？

ああ、そうさ。

ハンマ一族は戦士の直系……。
確かにその一族から魔力を持つ血が生まれるのは少し不思議ですね。

しかし、今のところ関連性は見えない。

なぁ、勇者様。
話はちょっと違うんだが、
俺と一緒にお師匠様に
会いに行ってみないか？

ラムディッシュさんの師匠？

あぁ、魔導機械工のお師匠さんだ。

俺なんかとは違い、あの人は膨大な魔力を持つ、本当の魔導機械工だ。

お師匠さんの元には未だに原理や用途がわからない魔導アーティファクトを多数眠っている。

もしかしたらその中に、勇者様の助けになる物があるかもしれない。

なるほど……。
魔導アーティファクトか……。

それに俺も久しぶりに会って、初心を取り戻したくなって、な。

アンタ……
カッコイイよ。

ただ……。

ただ？

ガクガクブルブル……

どうしたんだい、アンタ！

いいいいいいいやややや
むむむむしゃむしゃぶるい
ってやつだだだだ

変な人だねぇ……。

勇者様が追い求める魔王ツヴァイの先に『忌避の盾』があるなら、この程度の恐怖、なんてことないないない

ふぅ、落ち着いた。

大丈夫かなぁ……。
不安だなぁ……。
ダイの件もあるし……。

さて、勇者様がいいなら、
すぐにでも出発するが……。

どうする？

場所はどこなんですか？

ミリオンソード裏尾根……。
別名【雪渡りの千本峰】さ。

雪渡りの……千本峰……？