シスター

YOU ARE CHRIST?

二岡 アライヲ

WHO?WHAT?


(以下の会話は日本語訳)

シスター

まあ、ごめんなさい。私ったら…

シスター

そのルビーのような赤い瞳を見てつい…

シスター

赤はイエスキリストのカラー。“慈愛”の赤なのです。あなたはきっとこの教会に、いいえ。この町に何か重要な役割を受けて生まれたお方に違いありません。

二岡 アライヲ

それこそJESUS CHRIST(冗談でしょう?)な話です。
私はしがない下町の万屋ですよ。

二岡 アライヲ

さて、では早速仕事の話を。
鑑定を先に致しましょうか?
それとも建物の修繕を先に?

シスター

はい。あの天井のステンドグラスをご覧ください。

二岡 アライヲ

なるほど。
これは『最後の晩餐』を象ったステンドグラスになっているわけですね。

シスター

はい。そして丁度イエス様のお顔の辺りにヒビが…

二岡 アライヲ

ああ、はい。あの箇所ですね。
把握しました。
それにしても高いですねえ。

シスター

多分、先日の震災の時に入ってしまったヒビなのだと思います。
難しいでしょうか?

シスター

倉庫に梯子があるので、それを使っていただければ。

二岡 アライヲ

いえ、ただそれなりに高い足場を作らないと届かないですね。

二岡 アライヲ

それに一窓分のガラス総張替えになる作業なので、多少大掛かりな作業になると思います。

二岡 アライヲ

教会の外側に足場を作っても構わないですか?

シスター

ええ!?今すぐやって終わらせて頂けるのではないのですか?

二岡 アライヲ

…お言葉ですがシスター。
ローマは一日にして成らず、ですよ?

先ほどからあなた、自分のお国柄と勘違いなさっているようですが世間知らずもいい所ですよ?

二岡 アライヲ

この時代だから修理代を備品の下取りで賄おうとするのは良しとしましょう。

二岡 アライヲ

だが余りに自己都合過ぎるし、何より通訳なしで一方的に英語で話し立てるのが気に入らない。

シスター

そ、そんな言い方しなくったっていいじゃないですか!

二岡 アライヲ

いいえ、しますね。
あなた達はこの街の悲しみを知らない。

二岡 アライヲ

失礼。今日はとりあえず備品の鑑定だけさせて下さい。品物はどちらに?

シスター

こちらになります。

二岡 アライヲ

それは珍しい形をしていますね…一体どういう用途の骨董品なのでしょうか?

シスター

そんなの私が知るわけないでしょう!?

二岡 アライヲ

は?

シスター

なんせ私もこのチャーチに来て間もないものですから。
それも含めて鑑定して下さるのがあなたのお仕事でしょう?

二岡 アライヲ

だからそういう適当で高圧的な所が嫌なんだよ。

続く

20世紀のメロディー その4

facebook twitter
pagetop