マギアフィラフト
~錬章~
リーベからエンゲージ・コアの説明を受けたハル達は、それぞれにネックレスを手渡された。ネックレスには無色に透き通った結晶がついてある。これが常時装着を義務付けられた、エンゲージ・コアだ。
これがエンゲージ・コア
なのですね。
キラキラに透き通っていて
とても綺麗ですね。
はわあわわわわ。
高級そう。
壊しちゃったら弁償かな。
意外に小っけぇな。
大層な説明するから
もっとでけぇと思ったぜ。
これが奥の手?
何だか信じらんないな。
各々が感想を口に漏らす。タラトに至っては、匂いを嗅いで食べれないと知り、興味がなくなったようだ。
まだその結晶の意味を
知る事は出来ないでしょう。
しかしいずれ知るに至ります。
必ず皆さんの力になる事を。
そうリーベが伝えた時、講堂に一人の男が入ってきた。無精髭を顎に残しており、年齢は30代後半ぐらいに見える。
彼は武器の扱いを担当する
アルマーニ・キャロウェイ
教官です。
てめぇらクソガキは、
教えて貰う段階に程遠い。
基礎体力もド底辺、
武器の知識もからっきし。
まぁどうせすぐに
くたばりやがるんだから
話かけてくるんじゃねーぜ。
職務でここに来ているとは思えないセリフに、聞く者が凍り付いた。一人平然としていた影のある男は、言葉を返した。
貴様から教わる事などない。
そりゃあ結構な事だ。
フン。
私は絶対に死なないわ。
聞きあきた常套句だ。
真っ先に死ぬ奴の常套句だぜ。
俺だって死ぬつもりはねぇ。
勝手に決めつけんじゃねぇよ!
まさに雑魚のセリフだぜ。
まぁてめぇらみたいな
クソガキは、どうせ死ぬ。
あっという間に……
何も出来ずにな。
せいぜいこの二週間
楽しんでおくことだ。
…………
…………
キャロウェイの口からは、毒舌しか出なかった。言葉を返せなかったのは、その毒舌に誰も口にしなかったリアリティを感じたからかもしれない。
…………。
資料庫に行けば、
沢山の蔵書があります。
ご自由にお使い下さい。
場の雰囲気が沈みかけた時、リーベが資料庫なる存在を促した。キャロウェイが言う知識不足は、そこで補えば良いだろう。
それに先ほどの
ミストラン教官(リア)も
武器の扱いに長けています。
それに他に教官も居ますので、
ご遠慮なく質問下さい。
私完全に素人なんですけど
教えてもらえるんですか?
ミストラン教官が
訓練の義務はないと
説明したはずですが、
皆さんが望めば
その環境は整っております。
ご安心下さい。
よかったぁ。
リーベさん、
ありがとうございます。
ふ~、やれやれ。
もう俺は帰るぜ。
やる気のなさそうなキャロウェイは、リーベの返事を待たずして講堂を後にした。
言葉の悪い人ね。
まぁ、自分から関わらなきゃ
絡む事ないだろ。
言動は悪いですが、
しっかりとした
力をお持ちの教官です。
彼から学ぶべき事は、
いくらでもあるでしょう。
フン。
そろそろいいだろう。
俺も出させてもらうぞ。
はい……。
それでは皆さん
ご自由になさって下さい。
くれぐれも
エンゲージ・コアの装着は
忘れないように。
…………。
影のある男は、一番に講堂を出た。誰とも話さず、視線さえも合そうとしない。
追い掛けるように、リーベが退出する。
に……、く…………。
朝食を食べずに集まっていたせいか、タラトの空腹に限界が訪れていた。
じゃあ、まずは飯にしようか。
腹を埋めながら
今後の事を考えよう。