視界が眩い光にまれた。
視界が眩い光にまれた。
開かれた扉の先は執務室のような場所だった。
そこに立つ男を凝視する。
……つい最近、よく似た顔をみたような気がする。
あんたが、ベン・カサブランカか
いかにも
ラシェル。あれを
え?
依頼品だ
あ、うん
ラシェルから依頼品の入った箱を受け取る。
散々ぶつけたのか、綺麗に梱包していたそれはボロボロである。外側はどうでもよかった。
オレは箱を破く、梱包材を外し、中にある薔薇の蝋細工をベンに差し出す。
幸いなことに品物は無事だった。
これが依頼品です
ほう……見事だな。薔薇の花そのもののようだ
言葉と表情が一致しない。
彼は薔薇なんて一切見ていなかった。
目を細めて、彼を観察する。
それでで、あんたの本当の用件は何だ
ふむ
彼は受け取ったばかりの蝋細工を床に投げ捨てた。
え?
蝋細工はここに招く為の口実だ。
それは、分かっていた。
ガシャンとした音と共に、空間が歪む。
目の前がグルグルと回り始めて、男の声が脳に直接響く。
………幻獣王がこんなことをしていて、楽しいか?
……っ オレは幻獣王ではない、力は放棄している
いや、幻獣王だ。その身の流れる血がそう告げている
………
地下を見たであろう? 人外たちが幸せに暮らしている光景があったはず。
あそこなら、お主も幻獣王として生きていけるだろう
オレは幻獣王になどなりたくない
外にいても、お主は罪を重ねるばかりだ。誰も救えてないだろう
………
救えていない。
やっていることは、人外たちの無念を晴らすばかり。
その代償に、人間から恨みを買う。
幻獣王が外にいることが問題なのだよ
どういうことだ
朦朧とする意識の中、どうにかして口を開く。
人間世界も同じであろう?
国王や王族がその辺りの路地裏を歩いてはいない。幻獣王ではないとしても、デュークは誇り高き幻獣王の孫だ。そんな奴が、その辺りを歩いて良いのかね?
じゃあ、どこにいろと
地下だよ。あそこが、お主にとって一番良い場所だ。もう罪を重ねなくても良いのだよ
………
もう罪を重ねなくても良い。
そんなこと許されるのだろうか。
お主たちが何かをする必要はない。獣は人間が……我々が救う
………
それなら、そうして貰った方がありがたい……
これで、楽になれるのなら、
皆を救えるのなら。
彼女の無念を晴らせるのなら………
楽になりたい………