それは昨日の放課後のこと

見つからなかったね

うん。ごめんね
つきあわせちゃって

       彩月は同級生で友人な

  菜桜《なお》と一緒に校門まで歩いていた

ちゃんと見える? 危なくない?
危ないなら家の前まで一緒に帰るよ

ん~だいじょぶだいじょぶ
視力落ちるだけで
見えない訳じゃないから

       授業が終わり帰る前

 話が盛り上がり教室に残っていた2人だったが

    帰り際に菜桜がコンタクトレンズを
 
        片方落してしまい

      今まで探していたのだが

  結局見つけられずに帰ることになったのだ

こうなるなら替えのコンタクト
持って置いとくんだったな~

話には聞いてたけど
まさか本当に落ちるとは

今まで一回もそんなこと
なかったから油断した

     照れ隠しのように言いながら

     菜桜は彩月と共に歩いていく

        と、そこへ――

お~い、ちょっと待ってー
ふたりとも~

    彩月と菜桜、2人の友人である

  茉莉《まり》に背後から呼び止められる

一緒に帰ろ~

   2年のクラス分けで離れてしまったが

       今でも仲の好い茉莉に

うんうん、一緒帰ろ~

そだ。折角だし3人で
久しぶりにマックでも行く?

あ、好いね~。クラス
別れちゃってから
一緒に行ける機会、少な――

あれ?

    茉莉がやって来る校舎を見ながら

     彩月に頷いていた菜桜だったが

    これからの予定を考えるように上を
 
 何とはなしに見上げ、いぶかしげな声を上げる

どうしたの?

……いま、校舎の屋上に
人が居なかった?

え?

   反射的に彩月も視線を屋上に向けるが

       そこには誰もいない

いない、けど……

いないね……でも居たよ
絶対……

おっまたーっ!

って、どったの、2人とも?

       神妙な顔つきな2人に

      事情の知らない茉莉が尋ねる

     少しだけ迷うような間を空けて

      2人は茉莉に事情を説明した

さっきね、なおっちが
屋上で人を見たらしいの

ちょっと今、コンタクト
してないから顔までは
分からなかったけど、絶対いたよ

……ちょっと待って
屋上って、鍵掛かってるよね

うん。危ないからって
……自殺とか、あったらいけないし

……まずくない?

……まずいよね

   少しだけ、考え込むような間を空けて

先生に言いに行く?

それが良いかも

その、誰もいなかったら
怒られるかもだけど

その時は、私が
言いだしっぺだし
ちゃんと言うから

いいよ、少しぐらい怒られても
間違いだったら、笑い話で
すむだけなんだし

それよりも
何かあった方が嫌だし

うん、そだね。怒られる時は
私も一緒に怒られるから

一蓮托生って事で

じゃ、私も一緒に行くよ~

2人より3人の方が
説得力ありそうだし

ありがとう、2人とも

じゃ、職員室、行こうか

うん!

 そうして3人は、職員室へと向かったのだった

高校教師・山田五郎の小事件録・②

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