本当に居たんかいの?

ホントに居たんです

        放課後の職員室

      立ち入り禁止の筈な屋上に

 人が居たことを言いに行った彩月たちだったが

    その時職員室に居た最年長の教師

      藤原一太は疑わしげに返す

屋上の鍵は、ちゃんと
こっちで管理しとるしな

  ちらりと、職員室の壁にあつらえられた

 各校舎の鍵置き場を見ながら言う藤原教師に

本当に見たんです

そうだよ先生
菜桜は嘘ついたりしないよ

     菜桜や茉莉は懸命に説得するも

そうは言ってものぉ
うちの学校はこういうのの
記録は残さんといけんから
報告書を書かんといけんし

……勘違いじゃないのか?

      今年で定年するせいか

  やる気が全く感じられない藤原教師は

  面倒そうに重い腰を上げる事は無かった

勘違いならそれはそれで
良いじゃないですか
それよりも万が一にも
何かあったら大事ですよ

責任がと仰るのなら
私が頼んだことだと
書いて貰っても構いません

だから確認するだけでも
お願いします

わ、私も、その、連帯責任で
いいですから、菜桜ちゃんの
言ってること信じてあげて下さい

そんなこと言われてもの

これ、もうらちがあかないよ
他の先生を探してきた方が――

  どれだけ言っても動く気が無い藤原教師に

 彩月が見切りを付けようとした、その時だった

失礼します……

  1人の女子生徒が新たに職員室に入って来る

あ……柊さんだ

     常に学年トップの成績を取る

      いつも一人でいる同級生

  柊朱音(ひいらぎあかね)に気付いた彩月が

      反射的に視線を向けると

   朱音は恥ずかしそうに彩月から視線を外し

あの……屋上で人を見たんですけど

       藤原教師に向かって

    呟くような頼りない声で言った

柊さんも見たんだ!

え……う、うん……

先生! ほら、やっぱり
菜桜ちゃん嘘ついてなかったでしょ

先生。早く見に行った方が
何かなければそれが一番ですし

こりゃ、見に行かんと
いけんようじゃな

    新たに一人、それも成績優秀な

     優等生の言葉だった事もあり
 
   ようやく藤原教師は重い腰を上げる

え~と、どれじゃったかな

      幾つもある鍵の中から

   屋上の物を探せずにいた藤原教師に

先生、その、一番上の列の
右から五番目の物じゃ……

     朱音が迷いの無い声で言った

おおっ、よく見とるな
確かにこれだ

  藤原教師は、カバーも何もついていない

  素のままの状態の屋上の鍵を手に取ると

   鍵が掛けられていた小さなフックに

 自分の名前が書かれた小さなネームプレートを

        代わりに掛ける

 誰が使用しているか、そして無くなった際に

   すぐに気付けるようにという工夫である

さて、それじゃ行くとするかの

   鍵を手にして屋上に向かう藤原教師に

私達も行ってみる?
どうなってるのか気になるし

うん、そだね。このまま帰るのも
気になっちゃうし

じゃ、行ってみよ~

     彩月たちは後についていく

         それに――

え……行くの……その
ちょっと待って……

      朱音は迷いを見せていたが

  結局3人の後を一緒に付いて行く事になった

高校教師・山田五郎の小事件録 その③

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