うららかな、お昼休み
ゆったりと食事を楽しみたい山田五郎は
姪でもある彩月へ面倒そうに返す
けれど彩月は軽やかに笑いながら
無邪気に返した
これは謎なのよ、ゴロー兄
学校では先生と呼ぶように
彩月《さつき》さん
うららかな、お昼休み
ゆったりと食事を楽しみたい山田五郎は
姪でもある彩月へ面倒そうに返す
けれど彩月は軽やかに笑いながら
無邪気に返した
え~やだ~
ゴロー兄はゴロー兄だもん
頭痛い……
小さな頃から変わらない姪に
どうしたものかと思いながら
周囲の同僚な教師たちの視線を気にする
今年入ったばかりの新米教師としては
公私混同と言われないかとビクビクものだ
が、そんな心配は無用の長物
先輩教師たちは気にした所は無く
それぞれが勝手にお昼休みを過ごしている
話に聞いていた以上に
ゆるふわだな、ここ
理事長が祖父な、この私立高校は
お気楽極楽な祖父の影響もあるのか
よく言えば自由闊達な
率直に言えば大さっばな学校として有名である
それでいて有名大学への進学率や
クラブ活動などで名を轟かせるなど
世間での評判は高い
とにかく用が無いなら
教室に帰るように
先生は忙しいんです
お昼食べたいだけじゃない
そんなことより
聞いて聞いて~
はいはい、分かったから
好きに話なさい
子供の頃からの付き合いで
一度決めたら頑として譲らない性格を
彩月がしているのを知っている五郎は
諦めてお昼を食べながら聞くことにする
それで、何が謎なの?
朝、教材の用意をしつつ作っておいた
お昼ご飯を取り出しながら五郎は話を促す
うん。タレもしみて良い感じ
分厚いカツをサクッと上げて
さらりとした甘辛いタレに潜らせた
カツサンドをランチボックスから取り出す
いただきま~す♪
食べるな!
え~いいじゃん
一杯あるんだし
細身ではあるが食い道楽な五郎だけあって
ランチボックス一杯に詰められた
ラップに包まれたカツサンドをひとつ
ひょいっと取った彩月は
ラップを剥がし一口ぱくり
美味しーっ!
オーブンで焼かれていたパンに包まれた
たっぷりとしたカツの旨味が口の中に広がる
甘辛いタレの味がよく合って
水にさらされたしゃきしゃきキャベツの
歯応えも美味しさを盛り上げる
マスタードも良く合ってるね
あ、でもちょっと他にも混ぜてる?
マスタードじゃなくて
食中毒予防にわさびを少しね
それよりも話したかったことが
あるんじゃないの?
これ以上食べられては叶わないと
カツサンドを手にしながら話を促す五郎に
うん、そうそう。あのね――
彩月は、昨日の放課後にあった出来事を話し始めた