そうして
目をかけてくれたことに対しては
灯里も恩を抱いているかもしれない。




権力を振りかざして母を奪った、
ということでも無いのなら

侯爵は負い目を感じる必要すら
なかったのだから。

ここまでされたら……断れないよ、なぁ



西園寺に恩があるから
犯罪と知りつつ加担するしかなかった。

……そう考えるのは甘いだろうか。


なにが?

あ、いや、ええっと……西園寺様のところに古い人形があってさ。何回でも修理に戻ってくるんだけど、いい加減嫌になってんじゃないのかな、って

仕事ならやるでしょ

仕事……






灯里は
仕事だと割り切って
手を汚しているのだろうか。

割り切れるものなのだろうか。


金で動くほど困っているようには見えなかったけど















おかわり

食べる量だけはひとの倍ですのね

……俺のせい?

俺が来たせいで
食費がかかるようになって、











いや。まさか……


そう言えば

カツ丼を無駄にしたことも
あった……っけ。




マズい……


いや。まさか。
いくら何でも豚肉のために
殺人に手を出すはずがない。

それがいくら
いい金になったとしても!











なにかあったの?

なんでもない!!

で、でも意外だな。木下さんはこの手の雑誌は読まないと思ってたのに



晴紘は
さりげなく話題を変えようと試みる。

そんな挙動不審な彼に

あら



木下女史は目を瞬かせた。





嫌いな相手だからって、持っている情報にまで目を背けるのは間違ってるでしょ

それに毎週買ってるんだもの、中身くらい読まなきゃ
















あることないこと言ってくれちゃって!



そう言えば、
彼女がゴシップ誌で怒っていたのは
面白おかしく書かれた記事についてだった。

……読んでなければ文句も言えない。















でも正しいかどうかは別。そこは自分の目で見極めなきゃね

わかった? 後輩

了解です









その時。

パタパタと軽い足音と共に
大声が襲って来た。







pagetop