僕は友達を傷つけてしまいました。


大事な友達だったのに。




謝ったけれど
許しては貰えませんでした。



会うことも叶いませんでした。







許されないまま、この街を離れました。

親の仕事の都合、なんて理由で。

大人の都合に
振り回されるのが嫌でした。

だけど、その時は安心してしまいました。











僕は逃げました。

友達を傷つけた事実から……

~間章~

    

鐘の音が聞こえる。





何かが終わりを告げるかのような、

何かが始まるような、

不思議な音。

この街に来るのも半年ぶりか……

少年は歩き慣れたはずの石畳を踏みしめる。





離れた時と何も変わらない風景なのに、まるで知らない場所にいるような感覚に陥る。

…………

半年前までは、自分もこの人だかりの中に紛れていたはずなのに、



 


今は居心地が悪かった。

この街が僕を拒絶しているのかな

臆病者









       偽善者

裏切り者

「酷いよね」


「親の仕事の都合だからって

逃げられるんだもの」





「ズルいよね」

「友達を傷つけたのに」



「自分だけは、何もかも忘れて

一人で幸せになれるんだから」

くそ、嫌なことしか思い出せない

はい、こちらになりますね

コレット

約束の品物。確かにお渡ししました。
落とさないようにね

ありがとうございます

最近、物騒だから気を付けてくださいね

何かあったのですか?

放火殺人事件や失踪事件がここ周辺の街で流行っているの。失踪事件は老若男女問わずだから、気を付けてね

ご忠告、ありがとうございます

逃げなかったことは、褒めてあげるわ

……ありがとうございます

では、私は次の仕事があるから……失礼しますね

はい

え? 消えた?

一瞬にして女の姿は消えていた。

少年の目の前には、ゾロゾロと歩く住人たちの姿が流れていくだけ。

き………気のせいだよな。長旅で疲れてるんだな……

    

PM0:00

お、ここにいたか

 
声をかけられて振り返る。
そこには長身の男が立っていた。





半年前に離れたこの街に戻ってきた理由。




それは約束を果たす為。





その約束さえ果たせば、もう、足を踏み入れることはないだろう。

お久しぶりです

元気そうだな。
それで、話って言うのは?

探していたものが見つかったので、それを届けたくて

探していたもの?

これです……

………これは………

鞄の中から紙袋を手渡す。 

男は、それを受け取ると中身を確認。

目を見開いて、眉を潜める。

………

そして紙袋をグイッと少年の手に押し戻した。

……え?

戻されるとは、思わなかった少年は茫然と男を見上げる。

これは、お前が自分で本人に渡すべきだ

でも

オレが渡すより、お前が渡すべきだよ。

そういう問題じゃ

オレを介して渡そうだなんて甘いことを考えるなよ

途端に男の目が鋭くなる。
冷たい眼差しに少年は息を飲んだ。

……そうですよね……すみません、このまま貴方に渡してしまえば前と変わりませんね

また、逃げてしまうところでした

オレは仕事に戻るよ。
明日は休みだからうちに来いよ。場所は……分かるよな?

わかりますよ。それでは、明日……

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