帰り道、江岸と一緒にいた。
水澤と春河は先に帰宅した。
帰り道、江岸と一緒にいた。
水澤と春河は先に帰宅した。
工藤くん、昼食どうだった?
江岸が顔をのぞき込んでくる。
俺はあくまで淡々と答える。
まぁ…楽しかった
隣の少女は嬉しくてガッツポーズをとっている。
ねぇ、本当に浦部先生に何したの?
更に息を弾ませて聞いてくる。
別に、何もしてないって
嘘だぁー。あの公平無私な浦部先生がずっと工藤くんのそばにいるもん。授業の時も工藤くん見てニヤニヤしてたし
俺が珍しいからじゃないのか
えー
呆れ半分に言い捨てる。
江岸はまだ少し不満そうだ。
だが、次の瞬間には笑顔に戻る。
夜の二次会楽しみだね。工藤くん、綾瀬さんの家に行ったことないんだよね。また迎えに来て……
行かない
つい強い声が出てしまった。
遮られた江岸の顔が固まる。
え……?
どうしても江岸の顔を見れなかった。
うつむきながら押し殺すように叫びだす。
俺は…前に言ったはずだぞ。俺は誰とも仲良くなるつもりなんてない。例え江岸は例外だとしても、岸ノ巻の人と親しくなる気はない
…………っ
江岸がショックを受けているのが分かった。
だが、もう止められなかった。
汚い言葉が次々と吐き出される。
本当なら、俺は誰とも関わらずに一人で静かに死んでいくつもりだったんだ。なのに、お前達が俺と関わるから……。
わざわざ市の人呼んで二次会する意味が分からない。これ以上誰とも関係を持ちたくない!
瞬間の沈黙。
耐えきれずに顔をあげると、やっぱり江岸の目には涙が溜まっていた。
拳をつくってわなわな震わせている。
…………ごめん
やりきれなくなり、顔を背けたまま、再び歩き出した。
しばらく……一人にして
その時の江岸の表情は分からない。
だが、嗚咽まじりの彼女の呟きがかろうじて聞こえてきた。
……バカっ
江岸が俺の横を走っていった。
すれちがう間際、雫が俺の頬に当たった。
歩きながら、俺はこれでいいんだと自分に言い聞かせた。
ここに来る前の俺ならそうしてた。
誰とも関わらずに生きていくって決めたじゃないか。
その時のその気持ちに嘘はない。
だったらなんで……
なんで…視界がぼやけるんだよ……!