よく見るとまだ細く白い腕に自分のシャツを千切り巻きつける。
傷口は深いがまだ息があり応急処置で間に合いそうだった。

こんな細い腕で彼女はこんな奴らと戦って来たのだろうか。
まだ二十歳にもなっていないように見える。
まだ"少女"とさえ表現は許されるだろう若さだ。
彼女の目的はこの場にいる魔女、魔術師の抹殺。
理由はわからない。
ただ一つ言える事はあった。
それはーーー

……ジャックは?

殺したよ


そう、と目を覚ました彼女は興味なさげに答えた。

聞きたいことがあるんだが

……聞くだけ聞いてあげるわ


この屋敷の戦いについて不可思議なことは山ほどある。魔女、年の合わない殺人鬼。
普段ならオカルトだ、都市伝説だと一蹴されることが現実に起こっている。これの答えが知りたいと言えば嘘だ。

だがそれより俺は知りたい事があった。

何故、俺を助けてくれるんだ?


ただ一つ言える事は彼女は二回も俺の命を救ってくれたことだ。シェミーによる魔力狩り、ジャックのナイフ。俺を囮にするならば見捨てるはずだ。そして確実に敵を確実に殺せるはずなのだ。

俺は君の囮だったんじゃないのか…?
いや、助けられて不満とかじゃないんだ…ただ疑問に思ったんだ

っ!

……………

…答え、たくないわ

一瞬何かを言おうとためらったように見えたが、どうやら話してくれはしないようだ。

…そろそろなにか話してくれないか?君に関すること知りたいんだ

…なら一つだけ、私の名前

ソフィア・ミノルヴナ・エリツィナ

なら改めて俺も菅原 実だ
よろしくソフィア

……ええ


そんな彼女の表情はどこか嬉しそうでそれでいて悲しみも含まれていたように見えた。

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