クッ!!

ほらぁほらぁ!!
避けてるだけじゃ終わんないよ!!!

チッ!!

さっき彼女が受けた傷はかすり傷のはず…
それがどうして……!

そこだ!!

クッ!!

死ねよ!!東洋人!!

手慣れている…こいつは本当に…切り裂きジャックなのか?

けど誰かに操られているなら…
俺はどうしたらいい?

もういいだろ?誰も殺しでは僕には敵わないさ!
ねぇ母さん!!

ジャックのナイフは手慣れている。

一見して使い込まれているとわかる技能であった。

鋭く、止まらない自然な動作。戦闘経験がなければ軌道すら読めないナイフ。

そしてそれは不意に軌道をまたも変えるのだった。

しまっ……………

軌道を読み外したナイフは自分の左肩をえぐる。

激痛が走る。

ぐはッ……あああああああああああ

呪いさ、殺せば殺すほど血を求める

傷口が………広がっている?

ふふふふ、血だ、血だよ、母さん……
母さんの好きだった……

こいつ……笑ってやがる…

こいつだけじゃない、エビットだってシェミーだって笑っていた。
まさしくこいつらは同類なのかもしれない。

俺もあの時は笑っていた。

なら、もういいか楽にしてやる。

楽しいか、ジャック

あたりまえだろ?
好きじゃなきゃできないさ

こんなこととかさ!!

そうか

俺はあの時をはっきりと覚えている。

仲間を盾に進み仲間を乗り越え、最後は白が赤黒く染まる。

意識はあるのに理性がない獣の感覚。

俺は二度と戻りたくないあの感覚。

え?

一気に懐に飛び込みジャックのナイフを左手で抑え、刀を首にあてる。

突然の攻勢に隙を突かれジャックは動けない。

なんで…?この僕が……?

……場数が違う

お前は殺人鬼なのかもしれないが
俺は軍人だ

…俺はロシア人を100は殺した…と思う…

もしお前が本物の切り裂きジャックなら………
いや子供に変わりはないか………

まさかここで子供を手にかけると思っていなかった

さっきからごちゃごちゃうるせぇんだよ!!

じゃあなジャック

………が……けほッ

……僕は奪われるの…?
母さん………母さんは僕の…………

……かわいそうな奴だよお前は

お前に何が……わかるッ……

……お前にお袋はいないんだろ?

母さんはここに……いるッ!!
ねぇ…母さん!!

ゲホッ!

ねぇ……母さん…答えてよ…
なんでいつも……答えて………くれ…

……………………

きっと彼には理性を教えてくれる人はいなかったのだろう。

もしくはすでにその人を殺めていたのかもしれない。

俺は救えないんだ、そういう奴が。

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