どうやらこのお姫様はまだ名前は教えてくれないらしい。
お互いの名前も知らないのに命は預けているとはつくづくおかしい関係だと思う。
今どこに向かってるんだ?
ジャップは黙ってついてこればいいわ
…そろそろジャップとか呼ぶのやめてくれないか?
いいえ、やめないわ
…私にとってジャップはジャップしかいないのよ
じゃあさ、代わりでいいから名前教えてくれよ
あなたがもう少し役に立てば考えなくもないわ
どうやらこのお姫様はまだ名前は教えてくれないらしい。
お互いの名前も知らないのに命は預けているとはつくづくおかしい関係だと思う。
そして、しばらく変わらない景色の中彼女は一つの部屋の前で止まった。
さあ、ここよ
あの、どこか説明してもらっても?
入ればわかるわ
そう言うと彼女は扉を開ける。
ここは……ポールの部屋…!
ここはこの屋敷で初めて殺されたポールの部屋だった。
そこにはまだポールの死体と血痕が残っている。
ここになんの用があるんだ?
ポールに用があるのよ
…死体を使って何かするのか?
あきれた、私は魔女じゃない。
「本人」に用があるの。
まったく、勝手に殺すとかひどくね!
ま、肉体死んでんだけどさ!
二人と死体しかない部屋に第三の声が響く。
それはノイズ交じりではあったが確かにポールの声ではあった。
もう、おっかなびっくりはよしてくれよ…
昨日ぶりだな日本人、そんなビビることねぇよ
俺はほかに比べたらまだ小物だ
それで何用だい?
単刀直入に聞くわ。
「今回」は誰に殺されたの?
……ほう、そういうことかい嬢ちゃん
コードを言いな
俺は託したはずだ
LKJSHHD34
なるほど、面白い
これでこちらの合点もいった
俺を殺したのは
エビットだよ、
ムーンビーストだ、間違いない
あと嬢ちゃん、エビットは「気付いている」だろうよ
…だからイースのあなたを排除したつもりだったわけね
??
そういうこった
まったく未来の俺を使うなんて嬢ちゃんも隅に置けないねぇ
ええ、悪いけど利用させてもらったわ
傍観者に徹するつもりだったんだがねぇ
未来の俺はよほどその一つの未来が気に入らなかったらしい
私はどうしたら未来を変えられる?
……それはどこまでの範囲だい?
未来を変える?
あなたやはり知っていたのね
もちろんだとも、俺は偉大な種族なんだぜ?
なら言い直すわ
どうすれば「ここ」から抜け出せるの?
………………………
俺が言えるのは元凶をたたく、それだけだ
ただし、それは一度だって観測できてはいない
………そう、結論は変わらないというわけね
行くわよ、ジャップ
時間の無駄だったわ
うわ、ひどい嬢ちゃんだぜ
反抗期は怖いね日本人
え、あれ?もう行くのか?
てか、その声結局どこから聞こえていたんだ
あそこよ
ばらすなよ、カモフラージュの意味なくなるだろーが
クマがポール??
まぁ、ポールなんだけどさ
これは緊急の避難室みたいなもんさ
無線機みたいなもんだよな…?
まぁそれでいいさ
ほら、はやく行きな
殺人鬼は待ってはくれないぜ
エビットのことか?
ジャック・ザ・リッパ―よ
15年前のイギリスの殺人鬼がここにきているのか?!
…………そうよ
いったい誰が……まさか!
いやそんなはず!!
そうあの「ジャック」よ
私たちの中で最年少の
そんなありえない!
まだジャックは子供じゃないか!!
まだそんなこと言ってる人いるんだ
そんな大人はみんな殺したと思ってたよ
クッ………………!
俺に向ってジャックが投げたナイフが投擲される。
あまりにもすばやく、まるでそれが自然な行為のようで俺は動けなかった。
………………ッ!
お、俺を庇って……?
早く武器を持って!
……………………
……………………
!!!!!