六十部と話しながら歩き、動揺、恐怖など、裏の世界に驚きを隠せないでいる。俺はとんでもない事に足を突っ込んでいるようだ。
 ふっと、六十部は立ち止まり話しかける。

六十部紗良

ところで、鮫野木くんは野沢心のことを知っているわね? どこで知ったの?

鮫野木淳

それは、あの廃墟から出たとき、偶然、帰ってきたんです

六十部紗良

帰ってきた?

鮫野木淳

はい、アイツの家ですよね

小斗雪音

そうそう、ビックリしたよ

六十部紗良

いえ、その事は初耳よ

鮫野木淳

知らない?

小斗雪音

そうなんですか!

六十部紗良

ええ

 六十部にも知らないことがあったのか、どうも六十部を頼り過ぎているようだ。

六十部紗良

やっぱりあそこが、キーポイントなのね

小斗雪音

キーポイント?

六十部紗良

それより、今はここが重要よ

鮫野木淳

ここは中学校ですよね? ここに何かあるんですか?

六十部紗良

ここは昨日、私が調べていた。カゴメ中学校、この世界から脱出するための手掛かりがつかめるかもしれない場所よ

鮫野木淳

ここに、野沢心がいるんですか?

六十部紗良

――ええ、いるはず

鮫野木淳

はず? 居なかったですか?

六十部紗良

正直、私自身。野沢心を見たことがないの

鮫野木淳

そうなんですか

六十部紗良

そこで、お願いなんだけど。野沢心を見つけてくれないかしら

 断る理由は無かった。鮫野木と小斗は目を合わせて頷いて承諾した。

六十部紗良

あら、ありがとう。てっきり断れると思ったわ

小斗雪音

当たり前ですよ! ここから出るためなら何でも協力しますよ

小斗雪音

ねっ、淳くん

鮫野木淳

ああ、ここからで出たいしな

 六十部と野沢心を探すことにした。本当は藤松と凪佐を探したかったけど、この世界から脱出するヒントを見つけてた方が後々、役に立つだろうと思った。
 まぁ、アイツらなら無事と信じて俺はカドメ中学校に忍び込んだ。

 カドメ中学校に忍び込んで、鮫野木達は一年生の教室を一つまた一つのぞき込んで回っていった。

鮫野木淳

おの、六十部さん。もっと効率良い方法はないのか?

 教室を一つ一つ、窓を除いて回る。その都度に普通に授業受けている風景を見ておぞましさを感じた。

六十部紗良

そうね、名簿でも、あれば簡単に教室が分かるけどね

小斗雪音

じゃ、見に行こうよ

六十部紗良

探しには行ったわ。けどね、職員室にはやっかいな人が居て

鮫野木淳

やっかいな人ですか?

六十部紗良

喋るNPCなんだけど、どうもこの中学校の先生らしくて、昨日ここに入って名簿を見ようとしたら、その人に見つかってね。追い出されたの


 そんなことがあったのか、もしかして、そのNPCは……。

鮫野木淳

その人、NPCはどこに居るか分かりますか?

六十部紗良

ん? そうね、職員室に居るかしら?

鮫野木淳

そうですか。なら、その喋るNPCが居たら、俺が囮になります、六十部さんとユキちゃんは俺が囮になっている間に名簿を見つけてください

六十部紗良

良いの鮫野木くん? 名簿が見つからないかもしれないわよ

鮫野木淳

その時はその時です

六十部紗良

ありがとう

鮫野木淳

じゃ、行きますか

小斗雪音

何で淳くんが仕切ってるの?

鮫野木淳

悪いか?

小斗雪音

別に

六十部紗良

ふふっ、そうね

 ふっとした笑顔を見て心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

鮫野木淳

なんだ?


 鮫野木は胸を押さえる。走ってもないのにどうしたんだ?

六十部紗良

付いてきて、職員室に行くわ

鮫野木淳

はい

小斗雪音

分かった


 鮫野木と小斗は六十部の後に付いていった。

エピソード11 カゴメ中学校の噂(1)

facebook twitter
pagetop