みなさん、おちゃですが――

ひかり

わ-!! わーーっ!! か、かえちゃん! ちょっとまってね!

ひかり

お茶ありがとう! うーんおいしいなぁ、ごくごくごく

のむのがはやいです。あつくはないのですか

ひかり

う、うん大丈夫! ちょっと一緒に新しいのいれよっか!



そして――

ひかり

ただいま…。ふぅ~、もう大丈夫だよ…舌やけどしたぁ

ひかり

(と、とにかく留奈ちゃんにもかえちゃんにも、お互いの計画を知られるわけにはいかないもんね…)

留奈

だ、大丈夫…? 苦労かけるわね…

留奈

こほん……改めて、今日あなたたちに集まってもらったのは、他でもないわ

留奈

内緒のお茶会について、打ち合わせをしようと思うの

空子

はいっ、私たちも手伝いますねっ

千乃

くたくたー。ふふーん、千乃にまかせればぜーんぶ上手くいくんだよー

ミユ

えへへー、今からなんか楽しい気分になってきてもーて内緒に出来る自信ないー

留奈

ちゃ、ちゃんと内緒にしなさいよ!?

ひかり

……うん。かえちゃんを喜ばせるお茶会がしたいってことだったよね

ひかりはレポート用紙とにらめっこしながら、再び眼鏡をきらめかせている。

ひかり

かえちゃんといえば、お茶のスペシャリスト! 今日は留奈ちゃんから、確かプランがあるんだったよね?

留奈

ふふん、任せなさい

留奈はホワイトボードの前に立って、プレゼンをはじめた。

留奈

まず前提から説明するわ! この中には知っている人もいるでしょうけど、留奈は実は……イギリス生まれなの!

ミユ

通算50回目の自己紹介が始まったで……!

留奈

ま。要は英国風のティーパーティを開きたいってことよ。紅茶なんかを用意してね?

空子

な、なるほどです

千乃

紅茶、千乃大好きだよーえへへー。いつも紅茶の中に角砂糖でお城をつくるんだぁ

空子

でも楓ちゃんは日本茶全般が専門だし、大丈夫でしょうか…?

留奈

英国風の雰囲気重視よ!

雰囲気重視だった。

留奈

と、ともかく! みんなで紅茶とシフォンケーキを食べる会にするの! まあ、念のため日本茶も用意するけど…

留奈

不思議の国のアリスみたいに、楓を誘い込むのはどうかしらっ?

空子

わぁ、可愛いかもしれません!

千乃

ふふふー。留奈さんがウサギのコスプレするんだね? 衣装は千乃がつくるー

留奈

なっ、なんで留奈が……そ、そうね、柚木あたりがお似合いなんじゃないかしら!?

ミユ

ええで、ウサギやる! ウサギなら任せなさい! 鳴き真似かてまるで本物のように……

がたっとミユが立ち上がった。

ミユ

ウサギの鳴き声が分からん!

千乃

フィーリングでいいんじゃないかな?

ミユ

ウサギー!

適当だった。

空子

みんなウサギになってても、可愛いかもしれませんね!

空子

みんなでぴょんぴょん跳ね回っちゃいましょう!

ミユ

ウサギ―!

千乃

わーいわーい、ぴょんぴょんぴょーん

楽しそうにウサギが跳ね回る中。

おもむろにひかりが立ち上がり、ガタリと椅子が鳴った。

その表情はいつになく険しい。

沈黙に包まれた中、全員の視線が、ひかりに集まる。

ひかり

留奈ちゃん

留奈

ひっ、な、何よ……!

ひかり

かえちゃんがグッとくるのは多分――

ひかり

かえちゃんに、本当に美味しいお茶を淹れてみせることだと思う

ひかり

何より、本格的で美味しい紅茶の淹れ方を研究すべきじゃないかな

ひかり

本気はしっかり見せていこうね

きらりと眼鏡が光った。

全員賛同なのか、言葉もなくこくこくこくと頷いている。

留奈

な、何よ、当たり前じゃない……! 死ぬ気で特訓してやるわよ!

留奈

楓をうならせるくらいの、最高の紅茶でもてなしてやるわ!

ひかり

うん。一緒にがんばろうね、留奈ちゃん

ミユ

本気やっていうならウサギも一緒にやってもええで

留奈

え、そ、それはその……留奈のイメージとはあまり違うけど……

留奈

ば、場合によっては……や、やるわよ!

千乃

ウサギー

留奈

う……うさぎー……

恥ずかしさをこらえながら声を出す留奈。
そんな彼女を見つめてから、ひかりは眼鏡を外して、ひとり深く息を吐き出す。

お茶談義に花を咲かせているみんなは、ひかりの様子に気づいていない。

ひかり

(今は全力で、二人に協力してあげることくらいしか、思いつかない……)

ひかり

(でも本当に、これが正しい方向なのかな……?)

それでもひかりは決して、誰にも暗い表情を見せない。

迷いを悟らせたりはしない。

高花ひかりは、そういう子だった。

それが、ひかり自身の気持ちを追い詰めていることに、自分でも気づかずに。

第4話 作戦会議、その2

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