俺は家に帰りつくと、電話を掛けた。
数回コールされたのちに、相手が電話に出た。
俺は家に帰りつくと、電話を掛けた。
数回コールされたのちに、相手が電話に出た。
先輩。答えろ。
どういうことだ
……あら、聞いちゃったのぉ?
それがあんたの本性か
本性ねぇ。
本性っていうとこっちになるわね
聞いてないぞ、そんな話
言ってないもの。
だから言ったでしょう。
一条睦美はいい子よって
どういうことだよ
邪魔な女をあの子の存在が追い詰めて殺した。
私はひどいことなんて一言も言ってないのよ?
一条の姉になんて言ったんだ
えー?
それ聞いちゃうのぉ?
教えろよ
学校を休むなら次はあの子よって。
ただそれだけぇ?
それで勝手に死んじゃうんだものぉ、悠美ぃ、びっくりしたぁ
……
怒ったぁ?
少し黙れってくれ
ふふ、この程度で動揺してどうすんのよ。
そういう世界にあなたも入ったのよ。
自覚しなさい
先輩は俺の力が試せるって
ええ。
試せるわよ
……
親友がいじめられてることを知っていて、必死でかばって裏切られて。
そんな中学時代を過ごした
正当に自分を評価されることなく、執拗に、理不尽に人間の尊厳を次々に奪われるようないじめの数々
あなたは思ったはずよ
こんなの間違ってる。
こんな世界は嫌だ
……
正当に評価されたいと
……
だから私は誘ったの
自分の力を試してみたいっていうあなたの希望をかなえてあげたくて
ここはいいところよ。
才能と意志と努力がものをいう
だからって……
怯んだ?
あなたは中学の時から何にも変わってないの?
俺、どうしたらいいんだか……
あなたの好きなようにすればいい
……なんで一条を気にかけろなんて言ったんだ
あなたにとって有益な情報で、かつ、あなたが望んだ世界に近づいたでしょ?
俺はこんなこと知りたくなかった
でも知ってしまったわ
俺、一条のことマジでちょっと気になってるんだよ
いいことじゃない
先輩のことも……
やだぁ。
悠美のこと心配してくれてるのぉ?
生意気ぃ
先輩
一条さんのこと気になってるんでしょぉ?
……
じゃあ、救ってあげればいいじゃない。
私に気を使う必要ないわ
でも
ねぇ、金島くん。
あなたはこの学校で暴れたかったんでしょ?
好きになさい
南波悠美は後輩ごときには遅れはとらないわ
一方的に切られたその電話の向こう。
俺をこの学校へ導いた先輩。
俺は、覚悟を決めた。