一條

あ……

序列が張り出されて早数週間。
授業中に隣の一条が小さな声を上げた。

不思議に思ってそっちを見ると、手にケガを負っていた。
授業中にケガをするとは器用な奴だ。

なんでだ……

一條

……机、
とげが出てたみたい

保健室行くか?

一條

……

……はぁ

俺の優しさまったく伝わらない。
俺の歩み寄りもまったく伝わらない。

華麗にスルーした一条はごそごそと動き、ポケットの中から携帯を取り出した。
そして、徐ろに写真を撮った。

不思議に思って眺めていると、ため息をついて小さな声で言った。

一條

保健室には行く。
でも、
こういうことがあったら
証拠を
しっかり取っておかないと

そういって一条は携帯のカメラで撮った写真を見せた。
俺は首を傾げる。

一條

外部生だから
わかんないかもしれないけど、
この世界で
生きていくなら常識よ

へぇ

一條

……今年の1位は
中森君だから、
あとで報告するの

そうか

一條

……あたし
あなた嫌いよ。
全然あたしの優しさが
わかってないんだもの

そっくりそのまま言い返してやりたい。
俺が無言決め込んでいると、一条は携帯をポケットにしまって、教師にひとこと言って席を立った。

俺は教室から出ていくその背中を見送った。

俺はなぜ嫌いとまで言われたのか気になって、授業に集中できなかった。

その理由が分かったのは少し経ってからだった。

pagetop