薄れゆく意識の中で碧の顔が見えた。
 
窓から顔を真っ青にして下をのぞき込んでる。
 
いい顔。
 
悠美のことしか考えてない顔に、笑顔がこぼれた。

碧が学校に来なくなったあの日、あたしは生まれて初めて憎いと思った。
 
毎日碧の家に通った。
碧はありがとうというだけで学校には決して来なかった。
序列があたしより上の人間が下した決断は、あたしの評価も下げた。
 
碧の友達の評価も下げた。
 
許せなかった。
 
自分勝手だと思った。
 
でも、その時あたしには何の力もなくて、公園のブランコで途方にくれていた。

ショタ明

何やってんだ?

ロリ悠美

見てわからない?

ショタ明

ずっとひとりじゃん

ロリ悠美

……

ショタ明

友達は?

ロリ悠美

ほっといてよ

ショタ明

泣きそうな女の子はほっとくなって、友達に言われてるんだ

ロリ悠美

じゃあ、その友達がまちがってる

ロリ悠美

女の子はね、ほっといてほしいときもあるの

ショタ明

……そうか

ロリ悠美

すなおね

突然現れた男の子は、この辺の学校の子じゃなかった。

ショタ明

おれ、この辺まで探検しに来たんだ

ロリ悠美

学区違って遊ぶと先生に怒られるよ?

ショタ明

いいんだよ!
俺、序列1位だぜ?

ロリ悠美

だから何よ、序列がなんだって言うのよ

ロリ悠美

上の人間なんて馬鹿ばっかじゃない

ショタ明

ロリ悠美

なによ

ショタ明

お前が上になればいいだけの話じゃん

ロリ悠美

女の子よ?
なれるわけないじゃん

ショタ明

俺の学校序列2位は女子だぞ?

ロリ悠美

はぁ?!

ショタ明

頑張ればなれるって

男の子は、隣の学校の人だった。

名札に書いてあった。

ロリ悠美

やすあきくん?

ショタ明

ん?ああ、名札

ロリ悠美

やすあきくんのとこの2位って女の子?

ショタ明

うん

ロリ悠美

……あたしも頑張ればよかった

ショタ明

なんかあったのか?

トーンが落ちた声にやすあきくんはゆっくりと声を出す。

ロリ悠美

お友達……、大切なお友達が、いじめられて、でも、あたし、助けられなくて

ショタ明

うん

ロリ悠美

序列が、その子の方が高いの

ショタ明

1位は止めないのか?

ロリ悠美

止めないの。
うちの学校、そういう学校なの

ロリ悠美

自分の身は自分で守らなきゃいけないの

ショタ明

ふーん

ロリ悠美

だから、碧が、いじめられても、あたし、なにもできなくて

ショタ明

……本当に大切なら何を捨ててでも守れ

ロリ悠美

ショタ明

俺のとこの2位の言葉

ショタ明

いい言葉だろ?

ショタ明

あいつはそうやって、大切なもの全部守ってる

ショタ明

お前も、女子だろ

ショタ明

あいつとおんなじ女の子ならできるって

ロリ悠美

う、うん?

その男の子は本当に一位かと思うほどおバカなことを言っていなくなった。

でも、女の子でも上位になれるっていう情報はあたしにとっては素敵なものだった。
もう、あたしは、絶対に碧を傷つけたくない。
 
そう思った。

 


そうして、あたしは碧が嫌ったあたしに戻っていった。
笑顔で人を貶める。
学校がきれいになって碧は登校できるようになった。
その時の碧の悲しい顔をあたしは見ないふりをした。
その顔を認識してしまったら、また、弱いあたしに戻ってしまうから。
 
大好きな碧に罪悪感を持たせて、あたしから離れられないようにした。
 
あたしは、弱かったから。
一人で立つにはここは寒すぎるから。
親友になってくれた優しい碧を巻き込んだ。

番外編:悠美の世界!(2)

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