――高校二年 序列発表初日

泰明

去年は悪かったな

そう言った泰明。

確かに去年はいろいろあった。
序列に関することでさえ、とてもたくさん事件が起こった。

それでも、あなたは、最終的には自分を立て直した。
罪を受け止める決意もした。

その証拠が今年の1位防衛という結果に現れている。

絢香

何回謝られようと、許すことなんかできない。
でも一位ってことは、私に認められてなくても、学年のみんながあなたを認めたったことでしょ。
今はそれで我慢しなさいよ

泰明は何も言い返すことなく自分のクラスに戻っていく。


その背中を見て、以前とは異なる関係性を痛感する。
今は、泰明が必死に信頼回復に努めているけれど、一体どこでそれを認めてあげればいいか、もうあたしにはわからない。
それだけ、泰明はあたしに消えない傷を残した。

暗い顔であたしも教室に戻る。
教室に入るところで千裕がなかなか帰ってこない私を迎えに来ていた。

千裕

暗い顔してるとモテねーぞ

あの日以来、事件が決着してからは千裕はいつもの軽い調子になっていた。

うん。こっちのほうが千裕らしいかな。

どんなにわがまま言っても笑顔で

千裕

大丈夫だ。任せろ

って、軽く言ってのける方が彼らしい。

千裕

泰明に何か言われたー?

直球で心配するところも彼らしい。

絢香

何も言われてない。
ちょっと謝られただけ

千裕

何回も謝ってくるよな

絢香

それだけあたしに許してほしいってことでしょ

千裕の差し出した手に指を絡めるとくすぐったく千裕が笑う。

教室に入る。

そこはあの時のような辛い悲しい空間ではなくて、優しさに溢れていて、暖かい場所になっていた。

絢香!
課題やってきた?

開口一番に碧が聞いてくる。

碧は、悠美と一緒にいるために学校をたくさん休んだけど、悠美の学校行きなよ、の一言で学校に来るようになった。

悠美はまだ入退院を繰り返して、保健室登校をしている。

碧はあたしや牧と仲良くなった。

もともとはこっちよりの性格だったのか碧はもう、昔の様な演技をしなくなった。

ずるい!
あたしも絢香ちゃんに見せてもらおうと思ってたのに

牧は相変わらず序列役員だけれど、副長になったらしい。

三学期に発表されて喜んでいた。
あたしの周りにはたくさんの幸せが溢れるようになった。
もしも、また、悲しいことが起きるなら、あたしは自分を大切にして、全力で戦う。
それが、去年あたしが学んだことだから。

“あたしは誰にも傷つけられない”

去年ふと言葉にしたそれは、今でも私の心に息づいていた。
明るい道をあたしはこれからも歩いていきたい。
ひとまず今は。

絢香

もう!
見せるんじゃなくて、今日一日付き合ってあげるわよ

笑って言えば嬉しそうな仲間たち。
楽しい一年が始まりそうだ。

71時間目:エピローグ

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