夏休みにはいると、学校で起きたことは悪い夢のように思えた。

あたしはあれからカリスマ的支持率を集めるようになっていた。

なんだよ、みんなして、手のひらクルーかよ。



物思いにふけっていると、遅れて到着した千裕がひぃひぃ言っていた。

千裕

ホントに大変だ

千裕はそう言ってくる。

彼曰く、事後処理が一番大変とかで、

絢香

あたしがいじめられてる時よりも大変?

クーラーの効いた店内で、メロンソーダを飲みながらあたしが尋ねる。

あたしたち、千尋、匠、拓也、牧はファミレスで連日宿題会をしている。

部活組は部活が終わってからの参加で、今日はもう9時を過ぎている。

いろんな疲れで死にそうになってる千裕が答える。

千裕

んー。
あんときは絢香のサポートだけだったじゃん?
でも今回は、ほら、泰明がしょんぼりして、4位がいなくて、俺が2位だろ?
学年秩序ってなに?状態…

確かに、泰明が使い物にならなくなったというのは、各所から聞いている。

先日の期末テストでは、生まれて初めて泰明が2位になっていて驚いた。

もちろん、1位はあたしだ。

千裕

いじめに加担した人達は、これからどうやってストレス発散させていくかとか、碧達のことはどうすればいいのかとか、やることは山積みだよ

あ、悠美、意識戻ったらしいよ

牧が宿題から顔を上げて千裕を見ていう。

千裕

マジかよ、うれしい知らせだけど、それはそれで、まためんどくさいな

千裕

俺の権限で、お前を2位にできないかな

絢香

せめて悠美がいた4位にしなさいよ

千裕

ほら、2位って副官ポジションじゃん?
お前がしきったほうがいいじゃん?

絢香

自分が楽したいだけでしょ?

冷たく言えば

千裕

でもなー

なんて言って一向に引き下がる気はないようだ。

絢香ちゃんって、宿題もう終わったの?

みんなが宿題やってる中、一人で優雅にクリームソーダを飲んでいたら牧に聞かれた。

絢香

あたしは、初日から徹夜で終わらせるタイプなの

は!?え?
もしかして課題見せてくれたり?

牧が目をキラキラさせる。

絢香

見せないわよ。
自分でやるから宿題なんでしょ。
……まあ、ほんきでやばくなったらみせるけどね

千裕

……お前夏休みはどうすんだ?

絢香

そうね。
ひとまず今学期の総復習と一年生の分の予習かな。
できれば、二年生の分まで手を出したいのだけれど、やっぱり夏休み明けの課題テストで、また、一位を……

じゃなくて、千裕君は予定のこと聞いてんの

牧は、自分の手帳を投げてよこした。

祭りに映画に、近所のイベント、全て事細かに記してある。

遊べるでしょ?

周りを見れば、みんなが笑ってる。

もう、あたしはビクビクしながら外出しなくていい。

そう思うと嬉しくて、楽しくて、みんながいてくれることが本当に嬉しくて。

絢香

うん!
高校初めての夏休み、楽しみたい!!

今までいたメンバーとは少し違うけど、1年生の夏はとっても楽しかった。

70時間目:夏休みとクリームソーダ

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