悠美が教室を移動したことを確認して、あたしと千裕は腰を上げた。

千裕

絢香、無理だと思ったら、途中でもいいからやめろよ

絢香

わかってる

それだけ確認する。
 
みんながいる教室のドアを開けると、なぜか碧ちゃんもいた。

絢香

……あれ?
来る教室間違えた?

あたしがぁ、勝手についてきたのぉ

悠美

悠美を心配してくれたんだよぉ?

泰明を見たけど、頷くだけだった。
 
まぁ、1位がオッケーだしてんならいいか。

絢香

わかったわ

 
教壇に立つ。
 

絢香

今日集まってもらったのは、あたしがあたしの無実を証明しようと思ったからなの

絢香

あんなこともあって、みんな、混乱してるときに悪いけどね

泰明

……

泰明は何も言わない。
 
この前、自分でなんとかしたい的なことを言ってたから止められるかと思ったけど、そうでもなかったみたい。

悠美

絢香ちゃんの無実ってぇ、不正のことぉ?

絢香

それ以外何かあるかしら?

悠美

泰明を裏切ったことはいいのぉ?

絢香

それはみんなには関係ないでしょ?

悠美

……そうだねぇ

悠美が引き下がったところで、あたしは口を開く。

絢香

この際、あたしが悠美をいじめたかなんて置いとくわ

絢香

まず侑斗君に聞きたいんだけど、あたしの不正は当日発生したと考えられるのよね

侑斗

お前のは当日だよな。
島崎との密会だろ

絢香

あたしのほかに不正はあった?

侑斗

……

絢香

あったわよね

侑斗君が考え込むような顔をした。

侑斗

……神崎による不正が起きかけた。
未然に防いだはずだが、張り出された順位は悠美の順位だけ違った

悠美

……

悠美

悠美がしたって、いいたいのぉ?

悠美

うーん。
あの日ぃ、あたしは泰明と一緒にいたんだよぉ?

泰明

確かに俺といた。
昼休みも放課後も

絢香

そんなことは知ってんのよ。
見てたわよ

侑斗

俺がデータを渡したのは放課後だ。
目の前で印刷してもらった。
教室の印刷用紙が切れてて。
目の前で印刷されはしたが、印刷結果は見ない決まりだから、俺は裏側しか見てない

絢香

さて、ここで問題です。
なぜ印刷用紙が切れていたのでしょうか

侑斗

それは前のクラスが使ったからだろ

絢香

普通紙は補充が義務よね。
その証拠に、次の日の一発目はちゃんと紙が入ってた。
牧が調べてくれた

千裕

意図時に抜かれてたのか?

絢香

可能性としてはあり得るわ

絢香

侑斗君にこの前依頼してた、前日の悠美の姿に不審な点は?

侑斗

放課後、全く南波の姿が写ってなかったくらいだ

絢香

さて、その間悠美は一体何をしていたのでしょう

悠美

……悠美はぁ、そんな昔のことぉ、覚えてないよぉ?

絢香

覚えてなくても先生が覚えてくれてた

悠美

……うふふ、先生はなんだってぇ?

絢香

印刷室で手伝いをしてもらったって

絢香

悠美、あなたが何をしたのか私には大体わかってるわ

悠美

そう、だったらここでいえばいいじゃなぁい?

悠美

それに、絢香ちゃんが考えてるのってぇ、無理だよぉ?
一日その印刷機を使わないなんてことないかぁ、そこに紙を置いていたとしてぇ、絶対にぃ、途中で気が付かれちゃうよぉ?

絢香

そうよね。
でも、故障中の紙が貼ってあったら誰も使わないんじゃないかしら

悠美

それだったらぁ、確かにぃ、誰も使わないけどぉ、だったら悠美が回収するまでぇ、その紙は放置でしょぉ?
でも悠美は泰明と一緒にいたんだしぃ、ほらぁ、むりじゃなぁい?

侑斗

序列が張り出させる、印刷をされる前の1時間、悠美は度のカメラにも映ってない

悠美

あれぇ?放課後は泰明といっしょにぃ

絢香

6時間目にあなた、トイレに行ったわよね

悠美

さぁ?

侑斗

教室から出たところはカメラで確認できた。けど、それ以降の動きはカメラで確認取れなかった

悠美

……

悠美

そんなはずなんだけどなぁ?

碧ちゃんの手が、きゅっと握られたのが分かった。
 
その手を悠美はやさしく握ってあげている。

悠美

大丈夫だよぉ、碧

悠美

安心して。
怖くないよ

小さくつぶやいた声は、みんなに聞こえていた。

違う、違うの、悠美

悠美

ん?

カメラ、止めたの、あたしなのぉ

悠美

どういうことぉ?

……

悠美

碧、いってくれなきゃ、わかんないよぉ?

あ、あたしぃ、あの時ぃ、悠美がでていったからぁ

絢香

悠美のためを思ってカメラ切っちゃったんでしょ。
悠美がアリバイ作りのためにわざわざカメラに一度映る場所を通ってるなんて考えずに

悠美

……うーん

悠美

碧はそんなに考えなしじゃないよねぇ

悠美

碧、悠美のことよく知ってるものねぇ

悠美

……碧、本当のこと言って?
悠美をハメた?

凍り付いた表情のまま、碧はゆっくりと頷いた。

ほんとは、いうつもりなかったんだけど、でも、あたしぃ、悠美を止めたくてぇ

悠美

それで悠美をハメたのぉ?

いつか、何かで使えたらいいなってぇ

本当に誰かが使うとは思わなくて…

一度俯いた悠美にあたしたちの視線が集まる。

悠美

……あはっ

悠美

なにそれぇ、笑っちゃうんだけどぉ

そういって悠美は、壊れた人形のように笑い始めた。
 
その異様な光景に、あたしを含め誰も何も言えなかった。
 
碧の手を離して、お腹を抱えて笑う悠美は狂気を孕んでいた。

66時間目:絢香の説得

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