面会時間が過ぎて、そろそろ消灯かという時間。
 
千裕はやってきた。

絢香

びっっっくりしたぁ

ノックをしたものの、なかなか開かないドアに疑問を思っていると、ゆっくりを青ざめた顔をした友人がいたら驚くよね。
 
ここ病院だし。
 
普通に怖いわ。

千裕

うん

とりあえず、中に勧める。

言われるままに、椅子に座って千裕は、ゆっくりと口を開いた。

千裕

あの、怪我する前に助け

絢香

はいストップ―

千裕

絢香

あれは仕方のないことです。
むしろ結果的に停学にさせてごめんなさいって、あたしがいうところ。
助けてくれてありがとう。あの変態に何かされ切る前でよかったわ

千裕

……うん

絢香

あの事件のおかげ?
で悪の巣窟は消え去ったみたいだし。
元気出して

千裕

俺、ほんとになにもできなかった

絢香

誰よりも先に駆けつけてくれた。
私はそれだけでうれしかったよ

千裕

……うん

あんまり、いい顔じゃないけど、それでもちゃんと目を合わせて頷いてくれたから、とりあえずこの話は、終わり。
 
ベットの隣に備え付けてある引き出しからUSBを取り出すと、千裕は怪訝そうな顔をした。

千裕

それ、いつもの?

絢香

うん

千裕

使うのか?

絢香

その場の状況によるけどね

千裕

好きじゃないだろ、そういうの

絢香

どっちかっていうと嫌い。
でも、証拠として使えるなら使わなきゃだし

千裕

悠美のはあるのか?

絢香

美術室のだけね。
あれ以外は明確なこと言ってないもの

絢香

それだって、たった一言口が滑っただけの、証拠になるにはきわどい一言だけどね

千裕

…。
俺たちの停学開けるのとお前が学校に来るの一緒だぞ

絢香

じゃあ、放課後かなぁ

千裕

みんなの前で?

絢香

そんなことしないわよ。
呼んでも10位までかなぁ?

千裕

じゃ、俺声かけとくよ

絢香

千裕も動きづらいでしょう?
牧に頼むわ

千裕

……俺でもいいのに

絢香

え?何?聞こえない

千裕

なんでもない

千裕

じゃあ、今度で全部終わりにするんだ?

絢香

うん

千裕

……泰明は?

絢香

あのバカはもういい、気にしない

千裕は首をかしげた。
 
そうよね、あのこと知ってるのは、あたしと泰明だけだもんね。

絢香

気にしないで

千裕

う、うん

いつものように千裕は笑って、帰っていった。
 
あたしはすべてを終わりにするために牧に電話をかけた。

絢香ちゃんから電話がかかってきた。
 
内容は次、学校に行くときに、10位までの人を集めてほしいってことだった。
 
あたしは、やっとこの状況からみんな解放されるって思うとうれしくて、ちょっと泣きそうだったけど、そこは役員として我慢した。

長嶺

誰からの電話?
泣きそうだったけど

な、泣きそうじゃないし。
絢香ちゃんだし。
あなたには関係ないし

長嶺

ああ、このツンツン感やっぱ最高だね

ばっかじゃないの?!

長嶺

よしよし、怒らない怒らない

お、怒ってないわよ!

長嶺

それで?
絢香なんだって?

うぅ、軽く躱される……

次学校行った時、10位まで集めてくれって

長嶺

ああ、じゃあ、終わりにするんだ

どう終わらせるかは分かんないけどね

長嶺

島崎牧子の腕の見せどころだね!

任せて!あたしそういうのうまいから!

長嶺

島崎さんは来るの?

あたし10位にはいないから外から見とく

長嶺

なるほど

でもほんとよかった。
これでもう悲しい思いをしなくてもいいんだよね

長嶺

今度は向こうが悲しい思いになっちゃうけどね

……

長嶺

ああ、ごめん。
そんな顔しないでよ、俺困っちゃう

長嶺

でも、覚えておいてね。
絢香たちの勝利は、悠美たちの敗北なんだって

わかってるもん

自分でも軽率なことを言ったことくらい、理解してるわよ。
 
近くにあった包帯ぐるぐるの足を、とりあえず叩いた。
 
声にならない声を一瞬だした彼は、そのあと、ごめんねって抱きしめてくれた。

64時間目: それぞれの思い

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