週明けの月曜日。
その日は、何事もなく、進んでいた。

何事もないっていうのはまぁ、語弊があるけど、あたしの中じゃ、何もないに等しかった。
 
普通に授業は受けられたし、普通にトイレにも行けた。
 
前後で聞こえよがしな陰口は聞こえたけど、かわいいものよ。
 
黒田君を叩いてから、面と向かって何かを言ってくる人はいなくなった。
 
だから、少しだけ快適な学園生活が戻って来ていたのだ。
 

だがしかし、お昼休み終了間近先生に呼ばれて少しだけ、みんなと離れた瞬間、それは起こった。

両手を拘束された状態で、あたしは目の前の男をにらみつける。

というか、暇人か、こいつ。

絢香

前回に引き続き、これは後ろに晃先輩がいそうな気配

変なお兄さん

誰だそれ?

違うのか。
 
じゃあ、誰だろう。

絢香

あなた、その制服他校生でしょ?

絢香

いいの?
勝手に入ってきて

変なお兄さん

紫穂に頼まれてさぁ

序列低いのかしら、情報がダダ漏れだわ。
 
もしくは、ダダもれてもいいんだわ。

変なお兄さん

ちょっと、味見していいってさ

絢香

その紫穂ちゃんから聞いてない?
ただで味見させるような女じゃないって

変なお兄さん

聞いてないなぁ。
俺はとりあえずお前を物理的に傷つけろって言われてるだけだぜ

絢香

……性的嫌がらせじゃないの?

変なお兄さん

普通のは効果なかったんだろ?

絢香

……え?

変なお兄さん

って、俺は聞いてるけど

変なお兄さん

だからそこ、俺が呼ばれたっていうか?

絢香

だからって、何するのよ

変なお兄さん

とりあえず、殴るとこから始めようか

にこりと笑って、これからのプランを男は話し始める。

変なお兄さん

そのあとに、腕を関節のところで反対側におる。
俺一回やってみたかったんだよ

絢香

くそ野郎にも、ほどがあるわね

吐き捨てた言葉にも興味がないような顔をされる。
 
それは彼にとっては息をすることのように、ペラペラとトンでもないプランを口にし続ける。

変なお兄さん

あ、でも心配すんなよ。
おれ、顔は殴らない主義だから

変なお兄さん

お前くらいきれいな顔だったら、そのままの方が苦痛に歪んだきれいな顔になるだろ

絢香

知らないわよ、離しなさいよ

にやにやと近づいてくる男に、殺してやる、と心の中でつぶやいて歯を食いしばった。

60時間目:日常に潜む危険

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