頓珍漢な泰明と話してから、あたしの頭の中はこんがらがっていた。

動くべきかどうかで言えば、そりゃ動くべきだろうけど、こういうとき下手に動くと、あっちとこっちでごっつんこする可能性もあるわけで……。
 
つまり、泰明の馬鹿野郎のせいであたしは再び苦しい状況になっていた。
 
せっかくの休日というのに、気分は最低最悪、お外の雨模様。
 

まぁ、ひどいタイミングだこと。
 

と、玄関から呼び出し音が聞こえる。
 
また、変質者のたぐいかと警戒していると、携帯にメールが入る。
 

千裕

玄関にいるんだけど、絢香起きてる?

玄関に向かい一応、のぞき窓から外を確認して、カギを開ける。

絢香

もうお昼よ、起きてるわよ

千裕

それはよかった。
今から出かけられたりする?

絢香

別にいいけど、どこに行くの?

千裕

ん?侑斗のところ

そういって、千裕は携帯を見せてきた。
 
そこには、今日の日付と13時からという文字が見えた。

絢香

はぁ?あと30分しかないじゃない!

千裕

大丈夫大丈夫、絢香連れてくるから遅くなるって連絡したし!

絢香

お前の計画性のなさを私のせいにするなぁぁ!

慌てて、部屋着から外出用の服に着替えて、鞄にお財布だけを入れて走って玄関へ向かう。

千裕

毎回思うけど、ほんと着替えるの早いよな

絢香

毎回突然ギリギリに来る誰かさんたちのおかげでね

道路を二人で歩きながら話す。
 
雨の音に声が消えてしまわないように、少し張り気味で話す。
 

少し歩くと、小さな路地に出てきた。
 
そこで彼の足が止まった。

絢香

この近くなの?

千裕

そう

絢香

私、ほんとについてきてよかったの?

千裕

連絡してあるし

絢香

なんで止まったの?

千裕

……入る前に中を確認しないと、鉢合わせとかいやだろ

絢香

嫌だ

千裕

いないから、入るぞ

絢香

はーい

中は普通の喫茶店だった。
 
普通だ。
 
しかし、中にいた人たちが私たちのカランコロンでものすごく緊張した。
 
なんだここは、マフィアの集まりか。
 
びっくりした。

侑斗

お、こっちこっち!

奥の方の席に座っていた人が手を振った。
 
あ、松本侑斗君だ。

千裕

待ったか?

侑斗

そんなには、とりあえず、食べ物頼んで頼んで

千裕

じゃあ、ケーキセット二つ、チーズケーキとチョコケーキで

絢香

ちょっと、なんで勝手に頼むのよ

千裕

ここ、そういうシステムなんだって

絢香

だとしても、ケーキの種類くらい私に決めさせてよ

千裕

まぁまぁ、俺を信じろって

店員さんにケーキを頼むと、さっそく二人は本題に入った。

侑斗

千裕はなんの情報がほしいの

千裕

なんでも。
絢香に有効に働くものなら何でも欲しい。
しいて言うなら、南波悠美がおかしな事をしている動画

侑斗

南波は単体だろうが誰かと一緒にいようが、絶対カメラの前じゃおかしなことはしない

絢香

私がはめられた時のは?

侑斗

あれだって、いい感じのカメラの死角だ。
お前がぎりぎり見えるくらい

絢香

魚眼レンズでも買いなさいよ

侑斗

あれ、見づらいんだよなぁ

絢香

ちっ、手掛かりなしか

侑斗

……元2位ってこんなに口悪かったか?

千裕

生命の危機のため、本当の松崎絢香が出てきております

絢香

ほんともくそもないわよ。
今更取り繕ったって、みんな私があれてた時のこと知ってるんだもん。
意味ないわ

侑斗

ならいいけど

首をかしげながら‟俺のデータではそれでもいいとこのお嬢さん”なんて聞こえてくるけど、いいとこのお嬢さんでも一度身についた口の悪さはなかなか戻らないのよ。

絢香

あ、ちょっと聞きたかったんだけどいい?

侑斗

どうぞ

2人で話しているところに割って入る。
 
ちょうどケーキも来たし、話を変えるタイミングとしては、別にいいよね。

絢香

不正の起こった日って、当日なの?

侑斗

と、俺は考えてるけど、なんで?

絢香

いや、その日のカメラに悠美写ってる?

侑斗

怪しい動きは映ってなかったけど

絢香

うーん。
じゃあ、あなたがクリアファイルを教室から持ちだして先生に渡すまでに悠美はどこかのカメラに映ってた?

侑斗

いや、そこはチェックしてないけど

絢香

写ってたら悠美自身は怪しくないけど、写ってないってなると怪しいかも

侑斗

どういうことだ?

絢香

悠美が自分でファイルすり替えてないかってこと

侑斗

は?

千裕

俺もわかんね。
いつも自分で手を出さないやつがそんなことするか?

絢香

そう思わせるために何にもしてなかったのかもよー

侑斗

……。お前らが帰ったら調べるわ

絢香

そうして

絢香

神崎に邪魔されてたんでしょー。
分かんないよー、悠美何するか

侑斗

でも、気づきそうじゃねーか、教室に入って来たら

絢香

悠美は南中出身よ。
それくらいやってのけるわよ

絢香

特に、悠美ってわけじゃないけど、あのグループは手先器用だし

侑斗

そんだけかよ、根拠

絢香

まぁ、薄いけど、女の勘がそうだっていってるし

千裕

みんな悠美は自分じゃ動かないっていってたしなー

絢香

でしょ?

なんとなく納得いかないみたいな二人を押し切ってそういいきれば、なんとなく頷かれる。


 
うーん。自分ではいい線だと思うんだけどなぁ。



 
そのあとあたしたちは、それぞれ自分のほしい情報分のお金を払って、お店を出た。
 
泰明意外の男のこと休日に二人っきりってよく考えたらなくて、照れ臭かったけど、千裕の方が照れまくってったから、あたしはなんか冷静になれた。

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