絢香

あ、そうだ、ちょっと質問いいですか?

髪を切り、蓮さんと二人で学校に行く。

隣を歩く蓮さんを見上げれば先を促される。

絢香

序列の不正ってどうやってするんですか?
データ差し替えとかですか?

蓮さん

俺の時は差し替えとか、アナログとかだったけど

絢香

アナログ?

蓮さん

掲示されるときは紙だろ

手で紙の大きさを表現する蓮さんに見た感じの大きさを答える。

絢香

ええ、B5くらいですね

蓮さん

それ3枚くらいだろ

絢香

はい

蓮さん

なにで運ばれてるか知ってるか?

絢香

え、先生?

ちょっとだけ蓮さんがどう説明するか迷っているみたいだったけれど、思いついたのか口を開いた。

蓮さん

まぁ、掲示するのは先生なんだけど、運ぶものはクリアファイルなんだよ

絢香

ほうほう

蓮さん

クリアファイルごと入れ替えるとかあるぜ

確かに、透明のファイルに白の印刷用紙だったら、案外誰でも準備できそう。

絢香

蓮さんの時は?

蓮さん

2位と3位の戦いだったなぁ

蓮さん

俺、防戦しただけ

絢香

どんな感じでした?

蓮さん

まず、3位の奴が役員同士の諜報戦やったり、情報書き換えたりして足引っ張てて、晃がアナログですり替えに来てた

絢香

それを阻止したと

蓮さん

俺の友達がだけどな

絢香

ふーん

やっぱりやろうと思えばいくらでもできるね、不正って。
 
そう思って、ふと、一つ可能性を見つけた。
 
これなら、悠美も不正ができる。

蓮さん

お前んとこも不正なんだろ、南波は

絢香

らしいです。
最近知りました

蓮さん

じゃあ、それを立証すれば勝ちだな

絢香

難しいなぁ。
映像とか手に入らないかなぁ

正直、そこまでの映像は今のあたしじゃ手に入らないし、仲の良い役員もいない。
 
そうなると、やっぱり誰か協力者を新しく見つけなきゃだし。
 
……今のあたしに、協力してくれる人なんているのかしら?
 
なんて思いながら歩道を歩く。

蓮さん

島崎さんは?

絢香

島崎さん今ちょっと、彼氏のことで心身共にやばいから

蓮さん

ああ、長嶺な、あいつも災難だよな

絢香

申し訳ないですよね

蓮さん

ああ、だから昨日島崎さん休んでたんだな

絢香

全く関係ない他学年のことまで、よく見てますね

蓮さん

俺、一応そういうの、見てるの好きだし

絢香

そうですか。
良いご身分で

蓮さん

お前やっぱ、怒ってんだろ、まだ

絢香

むしろ?
あれで?
怒らない方がどうかしてるし?

蓮さん

悪いって、ごめんって

全く謝られている気配がしない。 
 
そう思って、千裕に愚痴でも言おうかしらと考えて、携帯の存在を思い出した。

電源を入れて、画面を見て、あたしは目を疑った。

千裕から怒涛の連絡がきていた。

それを確認して、少し考えて、放置した。


何があったかそのうち噂とかで流れるだろうし、大丈夫大丈夫。

あとで連絡しよう。
 
どうせ、もうすぐ学校だし。
 
あたしと一緒に歩みを止めた蓮さんが携帯をのぞき込んできたけど、気にせず、歩いて学校へ行った。

蓮さん

絢香さぁ、千裕のこと、大事にしてやれよ

絢香

大事に思ってますよ

蓮さん

ならいいんだけど

遅刻して学校についたときにはもう昼休みが始まっていて、ごった返す人込みの中、あたしたちはそれぞれの教室に入っていった。

54時間目:不正の方法は?

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