泰明からメールで連絡があった。
部活終わりに会えないかだってさ。
僕にだけメールが来たのかなって思ったけど、呼ばれた場所に行ってみると、匠も千裕もいた。

千裕

なんだ、みんな呼ばれてたんだ

拓也

泰明はちょっと遅くなるってさ

千裕

呼び出しといてそれかよ

軽口叩いてると、泰明が走ってきた。

泰明

ごめんごめん、遅くなった

いいよ、別にこの後用事があるわけじゃないし

泰明

お前は、勉強何とかしろよ

そ、それは別に、泰明に言われてなくてもわかってるし!

拓也

で、ようって何なの?

ちょっとだけ言い辛そうに、視線を外した泰明に、なんだ、絢香のことかと3人で合点が言った。

泰明

俺がこんなこと言うと、またお前らになんか言われそうだけど

千裕

なんだよ

泰明

ちょっと、絢香に構い過ぎじゃね?

千裕

はぁ?構わざるおえなくしたのは誰だよ

泰明

……俺

千裕

だったら、ほっとけよ。今絢香から俺たちが離れたどうなるかわかってんだろ

泰明

……俺なりにお前らのこと思っていってんだ

千裕

どういうことだよ

今にも掴み会いに発展しそうな二人を見て、匠がはらはらしてるけど、そこまで二人は馬鹿じゃないと思うんだ、僕は。

近くにあった段差に腰を下ろして成り行きを見守っていると、泰明は口を開く。

泰明

匠さ、お前ちょっと、やばい

え?俺?!頭が!?

拓也

自覚あったんだ

泰明

いや、匠の頭がやばいのは昔からだろ、そこじゃねーよ

誰もフォローしてくれない……

千裕

何がやばいんだよ

泰明

そろそろ絢香から離れないと、怪我させられる、と思う

それを止めるとが君の仕事じゃないのかね、泰明君

泰明

……

千裕

止めたくねーのかよ

泰明

すまん

はぁ、それはちょっと絢香が悲しむから、俺もやだなぁ

匠がしょぼくれて、絢香にメールを打ち始めた。
それを見て泰明はホッとしたように、僕を見た。

拓也

え、僕もなんかあんの?

泰明

確実じゃねーけど、役員の奴が変なことしようとしてる

拓也

それは、神崎?

泰明

教えられねー

拓也

そう、そっかぁ。推薦にまずいこと?

泰明

たぶん、推薦枠は二度ととれないだろうな

拓也

はぁ、それは絢香が悲しむよね

泰明

だと思う

僕も不本意ではあったけど、絢香にメールを打ち始める。
匠も僕も、絢香の悲しい顔が見たいわけじゃない。
きっと自己犠牲なんて、僕らに望んでない。
絢香ってそういう子なんだ。
どこまでも独善的でやさしい女の子なんだ。

千裕

で、俺は?

千裕

俺も呼んだってことはなんかあるんだろ

泰明

ねーよ

千裕

は?

泰明

だって、お前別に部活に青春かけてるわけでもなければ、推薦ほしいわけでもねーじゃん

千裕

そうだけど

泰明

そこまで、何にもねーと付け入るすきがねーよ

千裕

なんで俺も呼びだしたんだよ

泰明

お前だけ呼ばなかったら、なんかかわいそうじゃん

千裕

俺、お前にまでかわいそうとか思われてんだ

泰明

泰明

なんかあったのか?

首をかしげる泰明に、千裕が苦笑する。
別に、絢香を挟まなかったらこの二人って結構仲良いんだよなぁ。
下から二人を見上げて、昔みたいな空気感にホッとする。

俺、絢香にごめんねメール送った

拓也

僕も、ちゃんと理由も付けてね

泰明

俺の名前だしてないよな

そんなことしたら絢香悩んじゃうじゃん

泰明

よかった

拓也

泰明は絢香のことどうしたいの?

僕の口をついてできてた言葉に泰明は傷ついたような顔をした。
一体何に傷ついたのか全く分からないけど、泰明は小さく、分からないといって、突然背を向けて帰っていった。

拓也

えー、僕なんか悪いこと言った?

さぁ?普通のことだと思うけど

千裕

あいつ、もしかしてまだ混乱してんの?

拓也

でも、この前はそんな感じじゃなかったんだけど

絢香に向けられた視線を思い出して、僕は首をかしげた。
泰明のやりたいことが全く分からない。
今まで見たことがないほど、泰明には一貫性というものが感じられなかった。

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