お昼休みになってみんなでご飯を食べていると、牧がチョコレートをくれた。

はい。
これ、新商品

絢香

ありがと。でもなんで

絢香ちゃん。
最近おにぎり一つしか食べてないじゃん。
お腹空くといいことないよ?

絢香

食欲、まだ戻らないんだ

……神崎の尻尾なかなかつかめない

 
そういって、涙ぐんだ牧に慌てふためく私たち。

そ、そんな、序列役員大変だって知ってるし

絢香

ご、ごめん、ご飯食べる。
食欲無くてもご飯食べる

拓也

神崎だって馬鹿じゃないから大変だよね

千裕

ほら、絢香、俺のパン食えよ。
牧の目の前で食べてやれよ

絢香

お、おいしーなー。
パンってこんなにおいしかったんだ

……全然おいしそうじゃない

一同が静かになった。
牧が声を潜めて話し始める。

絢香ちゃん。
神崎はたぶん、誰かの協力を得てると思うの。
神崎一人じゃあたしと侑斗をこんなに出し抜けない。
だから気を付けて

絢香

わかった。
もしかしたら2年生も手を出してるかもしれない

2年生がそこまで馬鹿だなんて思いたくもないけど

絢香

そういうの、好きな人がいるのよ。
高位に

ああ、桐山先輩かぁ

話しているとすぐにお昼ご飯を食べ終わった。

ふと、誰かの視線を感じた。

あたりを見回すけど、それらしい人はいない。

どうしたの?

絢香

いや、気のせいだと思う

心配そうな視線でもなく、悪意のある視線でも、観察する視線でもなく、その視線の種類を図りかねて、あたしは首をかしげた。

誰かに相談するには、空をつかむような感覚で自分の中に答えもなくて、あたしは若干消化不良のまま一日を過ごした。

44時間目:消化不良(2)

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