中間テストの結果が出た。
一位を全教科一位を狙ってたけど、やっぱり泰明には総合で勝てなかった。
なんでこの世の中には化学が存在するのよ!
張り出された順位表を前に、ぐぐぐっと拳を握っていると、今はなるべく会いたくない千裕がやってきた。
中間テストの結果が出た。
一位を全教科一位を狙ってたけど、やっぱり泰明には総合で勝てなかった。
なんでこの世の中には化学が存在するのよ!
張り出された順位表を前に、ぐぐぐっと拳を握っていると、今はなるべく会いたくない千裕がやってきた。
さすが絢香ちゃん。ちょいちょい1位もあるね
……
あれ?怒った?俺、そんなに空気読めなかった?
そんなことないよー、千裕。
さすがは3位君だねぇ。
ほぼ全部3位じゃん
言葉に詰まっていると、拓也が助けてくれた。
いいね、グループだと、こういうとき助かる。
……、じゃなくて!
ねぇ!なんで悠美は5位内にいないの!?
さぁ、意外に頭悪いんじゃない?
……勉強できなくて、上位に食い込めるわけなくない?
そうでもないよー
こそこそと順位表を見ながら話していると、牧が近づいてきた。
確かに、絢香ちゃんたちは全体的にできるから勉強くらいでしたか差が出てこなかったんだろうけど、一応、顔面でいけば悠美は女子で絢香ちゃんの次だし、たぶん今の状態で誰に聞いても悠美は圧倒的支持率だしねぇ。
勉強とスポーツができていい子でも、この制度だと、人気と顔面で案外巻き上げが効くみたいねぇって、あたしは感じてる
まぁ、でも、悠美が今の高位って言うは、あたしは納得できない
牧が悔しそうに、何かメモを握りつぶしていた。
ちょっと気になったけれど、牧が何にも言わないから気にしないことにして、再び結果表を見る。
……ねぇ、拓也
ん?なぁに?
匠って、高校入って勉強してなかったの?
なんで僕に聞くのさ
いや、ママはなんでも知ってるかなって
生んだ覚えはないし
見上げる順位表の中には匠の名前はなかった。
ということは上位20位に入っていないということである。
牧ですら18位に名前があるのに。
匠をソッと見ると、少しだけ焦っているようだった。
僕は知っている、匠が高校に入ってから部活に集中していたことを
あたしは知ってる。匠君が1年生レギュラーになって頑張っていたことを
匠はそれを聞いてほんの少しだけ、うるっと来ていたようだけど、あたしはそれを許したりはしない。
匠中学校の時もおんなじこしたでしょ!
だってぇ、俺、今回いろいろ考えることあったしぃ
……匠って南波より頭悪くなってんだ
俺次絶対、5位内に入る!
えー、あの激戦区に入るの?
頑張る!
みんなの点数見てみなよ、大体95点以上だよ。一つのミスが命とりだよ?
島崎さん知らねーの?俺本気出したら数学は一番出来るんだよ!?この中で
ほほーう。それはあたしに喧嘩を売ってるのかな?
あ、いや、違くて……
順位表の前で話していると、後ろの方がざわっとしたのが分かって振り返る。
そこには、悠美と泰明がいた。
順位表を見て、あたしを探す素振りをする。
近くにいた拓也の陰に隠れるようにすると、自然と隠すように体を動かす拓也。
でも、そんなのお見通しだったみたいで、一瞬ささるような視線を感じた。
絢香―、僕今本気でビビった。
泰明、こんな視線で見てたんだね。
よく頑張ったね
そうよ、仮にも元カノにする威圧感じゃないでしょ?
次からそれとなくかばってあげる
またそうやって、甘やかす―
こそこそと軽口をたたいていると、今度は、悠美たちが大きな声を上げた。
あれぇ?絢香ちゃんの点数ぅ、良すぎじゃなぁい?
ほんとだ。これ絶対カンニングしてんだろ!
後ろの席だしねぇ、やりやすい場所よね
そ、そんなことないよぉ、絢香ちゃんはそんなことしないよぉ
言いながらどうしてこっちを向くのかな!?
4人はこっちを見てからわざと大きな声で言ったようで、……訂正、悠美はあくまでも普通のボリュームだった。
そこにいた人間の視線が一気にあたしたちに向いた。
普通に勉強しもぉ、こんな点数なかなかとれないもんねぇ
絢香って、自分が上位になるためにはなんでもする感じじゃん?
そうそう、人を殴ったりねぇ
かわいい顔しててもぉ、中身がそんなんじゃぁ、ダメだよねぇ?
言い返そうとしたときに、千裕が手を引っ張った。
な、なによ
あれはほっといていいと思うぞ
は?言い返さないとほんとになっちゃうじゃん
授業中に見返せばいい
……わかった
頷けば、千裕は手を離す。
ちょっとだけ、ドキドキしたけど、あたしが興味を失ったように踵を返すと、みんなも教室へ戻る動きを見せた。
牧が少しだけ、複雑そうな顔をしていたけど、この時、どうして牧がこんな顔をしたのか、あたしはわからなかった。